高次脳機能障害の認定要件として、意識障害とならび画像所見が挙げられます。他に脳外傷の診断名が必須ですが、診断名は画像所見があって付けられるものです。また、脳実質へのダメージで意識障害が起きますので、原則、脳実質への破壊なければ意識障害は起きません。したがって、脳外傷による障害の前提として、画像所見・意識障害・診断名はそれぞれリンクする関係で、3つが揃うことが普通と考えられています。ただし、脳出血(クモ膜下出血など)が消失して脳実質に器質的な変化(脳室拡大や脳萎縮など)がないケース、軽度意識障害(意識を失うまでもなく、もうろうとしているだけ、健忘が続く場合など)が、認定上、判断を難しくしていると言えます。
今日は脳損傷の画像を観るに際して、どの画像を参照すべきか、どのように観るか、その基本を復習します。今回は『高次脳機能障害リハビリテーション入門』を参照、抜粋しました。
【1】画像診断の観点
1、病巣の範囲はどこか?どの血管領域か?
前頭葉なのか、頭頂葉なのか、または、中大動脈領域なのか・・・損傷部位と残存する症状に関連性があるからです。例えば、前頭葉の破壊は、注意・遂行機能、情動障害の原因病巣になります。局在性損傷(その部分に脳挫傷や硬膜下血腫あり)は、わりと一致する傾向です。びまん性軸索損傷の場合は、その点状出血が脳全体に散らばっている傾向から、症状や障害が多種多様となる覚悟しています。また、記憶障害はどの部位であっても見られる傾向です。
2、立体的に病巣範囲が構成できるか?
画像を3次元でイメージします。私達はまず、矢状断と水平断を比較しながら脳外傷の部位を確認します。さらに、冠状断で奥行きのイメージに至ります。面ではなく、立体的に破壊された部分の大きさ・範囲を把握するのです。
※ 画像断について
【2】画像診断に用いる検査
1、CT(computed tomography)
急性期の脳出血、クモ膜下出血に有効。画像所見を確認する基本は、出血部位は脳実質と比較して高吸収域に描出され、脳梗塞の虚血性病変は低吸収域に描出されること。
2、MRI(magnetic resonance imaging)
CTに比べ、骨のアーチファクト(レントゲン撮影時のノイズ、反射など)がなく、分解能がすぐれ、脳幹部や後頭蓋窩の情報が得やすい。
撮影法はT1強調画像、T2強調画像、T2スター、拡散強調画像(ディフュージョン)、FLAIRなど。
私の場合、局在性損傷はT1,T2の矢状断と水平断を並べて病巣部を確認します。微細な出血、脳梗塞は受傷直後(急性期)なら、ディフュージョンの撮影の有無と画像に注目します。3か月以後はT2スターが頼りになります。T2スターなら、受傷2年後の点状出血も確認できました。また、経時的に脳実質の変化を追うに、FLAIR(フレア)を観ています。
以上は、脳神経外科の医師に教わったことですが、専門医はこれらを原則として、例外も留意しているとのことです。
※ MRIの撮影法
3、SPECT(single photon emission computed tomolgraphy)
CTやMRIが主に形態をみる検査に対して、SPECTは循環動態などの機能的評価をする検査です。つまり、損傷状態ではなく、損傷部位の血流低下を観ます。ただし、自賠責の認定上、事故外傷によるものか否かが問われますので、外的な損傷を示す直接の証拠にはなりません。損傷なくとも、なんらかの原因で血流低下が起きる可能性があります。とくに、高齢者の場合は難しい判断になります。
これらを踏まえ、明日はCT、MRIの一覧表をUPします。