昨年から続く上肢の筋断裂と神経損傷、これも2例目の症例でした。いずれも、金澤が担当しました。
筋断裂と筋移植、正中神経の挫滅と切除、デブロービング損傷と皮膚移植・・・骨折のない上肢では、弊所の最重傷例です。
上肢・下肢の各関節に複数の機能障害が残る場合は、それぞれ何級か事前に予断することが大事です。設計図通りに立証作業を進める必要があるからです。
後は医師と十分に打ち合わせの上、各関節の計測を入念に行います。手指・足指の機能障害の場合、多くの診断書では完全に計測・記載されていません。指一本一本の計測は大変に面倒なのですが、等級を取りこぼす結果=数百万円の損になるかもしれません。
医師との意思疎通が大変でした
6級相当:上肢 屈筋腱損傷 + 正中神経損傷(30代女性・神奈川県)
【事案】
信号の無い十字路にて優先道路を走行中、一時停止無視の車に側面衝突され横転したもの。その際、左上肢がサイドガラスを突き破り、車体と路面に挟まれる形で左腕はズタズタ、前腕から手指にかけて広範囲に裂傷・挫滅となり、デブロービング損傷となった。内部は、長母指、深指、浅指の各屈筋腱、長掌筋が断裂し、正中神経も挫滅、各関節の機能障害必至の状態となった。
【問題点】
皮膚移植、腱移植、正中神経切除等、各手術を行った。結果的に肘関節の可動だけわずかに残して、左上肢の関節はほとんど用廃に。
等級を余すところなく抑え込むこと、症状固定のタイミングを計ること、いずれも依頼者さん・主治医双方との意思疎通が鍵となる。
【立証ポイント】
機能障害を余すところなく立証するために、何度も病院同行を重ねた。初回面談では、予約・面談料が必要と言われ、怒られ、会ってすら頂けなかったが、誠意を伝え続けた結果、医師との信頼関係が造成され、コミュニケーションも潤滑になっていった。
6か月後、依頼者様・医師と相談の結果、症状固定を早期に設定した。
・合計16関節に及ぶ可動域測定は根気のいる作業、正確に、丁寧に、専用用紙を使用して計測を促した。
・可動域制限の原因である各筋の断裂、正中神経の損傷、それぞれの状態と処置・術式を後遺障害診断書に記載頂いた。
申請の結果、自動値の数値から判定、手関節8級6号+肘関節12級6号+手指7級7号、機能障害は各関節ごとに併合していく算定方式で6級相当に(計算上5級相当となるが、上肢全廃5級6号におよばす6級相当)。
依頼者さんと主治医に真摯に向き合ってきた結果、目標等級を確保した。