過失相殺(過失割合)は損害賠償論ですから、私共の仕事ではなく弁護士の仕事になります。しかし、事故の原因調査の要望があれば、事故状況を調べる過程で避けて通ることはできません。事実、おなじみの『判例タイムス』から類似の事故を検索する作業も日常茶飯事です。業務日誌でもたまに取り上げてみたいと思います。
(前巻) (38)
最新(とは言っても平成26年5月発行)の判例タイムス38に例示された、いくつかの事例を見てみましょう。とくに前巻に比べて、本書から自転車事故例が充実、また駐車場内事故の判例も新たに取り上げられました。
第1回は、注目してきた駐車車両に追突した場合の過失割合です。普通に考えれば、追突したドライバーの前方不注意がすべてに思えます。しかし、違法で駐停車していた自動車にもわずかの責任があるケースが例示されたと言えます。早速、同ページを見てみましょう。
(1)駐停車車両に対する追突事故 (P299)
基本過失割合はやはり、「追突側に100%過失あり」、からスタートです。駐停車両側に責任を追及する場合、以下の道路交通法違反と事故状態・事情を鑑みて、修正要素を検討することになります。
<道路交通法から>
① 駐停車禁止(44条)の道路であったかどうか
② 駐車禁止(45条1条)の道路であったかどうか
③ 人の乗降や荷物の積み下ろしで停車する場合も、できる限り左側に寄せて、他の交通の妨害にならないように(47条1項)
④ 駐車する場合も道路の左端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないように(同2項)
⑤ 夜間の場合、前照灯、車幅灯、尾灯、その他の灯火をつけなければならない(52条)
<事故状況・事情から>
A 事故現場の状況(交通量、交通事情、道路の状況)
B 後続車による駐停車車両側の視認可能性(見通しの良さ、明るさ、時間帯、天候、気象状況、 夜間の照明の状況)
C 駐停車車両側の事情(駐停車禁止場所か否か、駐停車の形態、駐停車した理由、駐停車車両の大きさ、非常点滅灯・駐車灯・尾灯の有無)
D 追突車両側の事情(追突車両の車種、速度、運転者の年齢、行動、運転状況(飲酒等含む)、前方後方の注視義務違反、スリップ痕、ブレーキ痕の有無・長さ、衝突車の操作ミス、見通しの良さ・明るさ)
以下、修正要素について、重複しますがタイムスでは以下の通り説明されいます。