「弊所は華々しい実績を重ねています」と宣伝したいところですが、現実には上手くいかなかった仕事も存在します。もちろん、小数例ですが、各々依頼者様には平謝りです。それでも、何事も失敗から学ぶことがあり、私達の医療調査・保険請求の仕事も然りです。そこで、反省と将来への経験則の為に、いくつか紹介したいと思います。
ある発明家はこう言いました。
「実験の失敗? それはない。 失敗こそ、こうやると上手くいかないことが分かった点で成功の一つだ」
治りがよく、その結果、後遺障害等級が低くなることは、間違いなく良い事です。しかし、関節内骨折ですと、骨癒合後も可動域が狭くなる機能障害が残りがちです。将来の回復度合いは定かではありませんが、一定の治療を終えたしかるべき時期に症状固定、後遺障害等級を確保したいと思います。
本件の場合、その治療・リハビリ効果から、深刻な障害は回避できました。しかし、骨折箇所と状態から、できれば早期に12級7号を付けて解決したかったと思います。私どもの想定とは裏腹に、被害者さま本人のご意向、医師の方針、コロナはじめ周辺問題、様々な要素から症状固定が延びて、14級に留まる結果となりました。これも一つの結果です。
お人柄もやさしい被害者さんでした
14級9号:足関節外果骨折(70代男性・山梨県)
【事案】
原付バイクで信号のない交差点に進入したところ、右方より走行してきた車に衝突され、受傷した。直後から強烈な痛み・不具合に悩まされる。
足関節外果とは、外側のくるぶしです。腓骨遠位端骨折とも言います。
【問題点】
救急搬送され、骨折が見つかったにも関わらず、「物件事故扱い」となっていた。
また、主治医がプレートを抜かなければ症状固定は出来ないと仰っていたため、初期の段階で神経症状の14級止まりが予想された。
【立証ポイント】
「物件事故扱い」は後遺障害の審査では好ましいものではないと説明も、相手方に行政罰が課されると、業務に支障が生じてしまうことを懸念、つまり、加害者への情けです。その意を酌んで、「人身事故入手不能理由書」に事情を記入するしかなかった。
症状については、病院でのリハビリに加え、日常生活でも毎日散歩をするなど精力的に取り組んだため、事故後半年で順調に癒合し、可動域制限も既に残っていなかった。術後1年を経過した段階で抜釘手術、続く最終診察日に症状固定の進行も、コロナ禍ということもあり、依頼者の希望で医師面談はせずに、打合せのみで後遺障害診断書作成を依頼した。
案の定、満足のいく後遺障害診断書が上がらず、郵送にて追記・修正を依頼、14級を確実とする内容に直した。レントゲン画像の打出しを添付し主張を補強、きっかり40日での認定となった。