学生時代は小中高大およそ12年間剣道部でしたので、武道・体育会のしきたりで成長してきました。挨拶に関しては、それは厳しく指導されてきたと思います。
その挨拶ですが、長らく疑問を持っていました。先輩を見つけたら、「押忍!」と当然に挨拶します。道場はもちろん、キャンパス内外でも一貫してきたことです。目敏く先輩をみつけては挨拶です。しかし、自身が上になって、逆に後輩を先に見かけた場合、挨拶されるのを待つべきか?です。体育会では、”先輩から先に挨拶しない”これがずっと慣習になっていたように思います。挨拶を待つのも、何か変でしたので、こちらから後輩に対して、先に「おうっ!」って声をかけたものです。
しかし、社会人になって間もなく、そのもやもやは解消しました。当時の上司はそのような順番など気にせず、声をかけてきました。ある時、長らく疑問に思ってきた挨拶の順番について、その上司に質問してみました。その答えは実にあっさりしたもので、「気づいた方から挨拶すればよいのだよ」です。挨拶そのもので立場の上下や序列など、端からそんなルールはないとのことです。
一方、体育会でもない一般の社会でも、立場や役職が上の者から先に挨拶しない、との哲学を持っている人が存在しました。それは年齢に関係ないようで、育った環境から培われてきたように思います。例えば、有名大卒で転入してきたある若手社員さん、もちろん、社外の私にはしっかり挨拶をしてきますが、社内では職位が下(言い方も妙ですが、仮に)の者には、まず先に挨拶しません。つまり、一般事務員やパート事務員からは、その挨拶を待ってから、挨拶を返すようです。これは、確固たる己の信条、あるいは俺様ルールでしょうか。先の上司と真逆、違和感を覚えます。
この社員さんは上司への挨拶は抜かりありませんが、床を掃除している清掃員には絶対に挨拶をしません。黙って拭きたての廊下をずけずけと歩いていきます。就職ランキング上位の一部上場企業、有名保険会社でも、残念ながらこのような社員がわずかに存在するのです。
さらに挙げますと、この社員さんと打ち合わせで飲食店を利用した時も、明らかに年上と思われるウェートレスさんに、「これ下げて」とテーブルの食器のかたずけを指示しました。普通、年上に対して命令口調はないです。「すみません、お皿を下げて頂けますか」と、お願い口調が普通です。そもそも、歳の上下は関係ありません。単に他者に対する口の利き方がなっていません。令和になっても今だに、店員に威張りちらかす輩を目にします。威張るお客様は、学歴や収入、社会的地位も関係なく、一定数存在します。お客と店員の序列=「お客様は神様です」など、昭和以前の感覚です。
この社員さん、その人間性から、今後すべからく損をするだろうと思いました。しかし、それを注意・指導するのは立場上、私の仕事ではありません。日頃から序列を確かめるような生き様の父親の影響か、そのような家庭で育ったのでしょう。これからは自ら気付き、学ぶしかないと思います。
冒頭、礼儀を徹底してきた武道、体育会で育ってきたゆえの疑問から始めましたが、礼儀そのものの根拠は、他者への尊敬と気遣いではないでしょうか。この根本があれば、誰彼気にせずに自然と挨拶やマナーは発露されると思います。この根本はしっかり教育すべきと思います。育ちというものは恐ろしく、大人になってから自覚して修正するのは至難です。むしろ、歳を重ねる程、固まってしまいます。最近の有力者の失言からも、そのように思います。