一番重い症状が認定されず、二番目の症状が認定されることがあります。これは、自賠責保険の審査基準がそうさせるのです。
骨折と違い明らかな証拠のない打撲・捻挫での認定では、受傷~症状固定までの症状の一貫性が命です。本件の場合、初回申請での主訴であった腰椎捻挫を捨てて、症状の一貫性があった頚椎に絞って申請し直しました。結果は以下の通り。
何事も相手あっての事、障害申請も審査側の基準に合わせて申請すべきです。私たちの業務は、(障害の)真実を明らかにすることが出発点ですが、真実の範囲で依頼者の利益の最大化を目指すものです。本例は、まさにその柔軟性が問われました。
リカバリーできました!
非該当⇒14級9号:頚椎・胸椎捻挫(20代男性・静岡県)
【事案】
自動車にて右折信号で右折を開始したところ、赤信号で交差点内に侵入してきた対向車と衝突し、負傷した。直後から頚部・胸部・腰部痛、とくに腰椎の神経症状に悩まされていた。
【問題点】
ご相談を受けたときには、既に6ヶ月目であり、保険会社から月末での打切りを宣言されていた。通院中の整形外科には以前お世話になったことがあるので、MRI検査依頼については同行せず、ご本人に任せることとなった。
その後、後遺障害診断書を依頼し、全期間の診断書・診療報酬明細書を精査すると、頚椎と胸椎の捻挫は初診時から診断名があるものの、腰椎捻挫が出現したのは”初診から1ヶ月経過後”であったことが判明した。MRI検査は症状が重い腰椎のみ撮影しており、バランスの悪い申請となってしまった。その嫌な予想は的中し、40日で「非該当」の通知が届いた。
【立証ポイント】
腰は1ヶ月後から出現しており、因果関係で否定されたため、再請求(異議申立)では腰を捨てて、頚椎1本で申請する方針を固めた。
主治医に追加資料を作成していただくだけでは弱いと感じたため、追加で頚椎のMRI検査を依頼し、すぐに手配していただいた。新型コロナウイルス第2波の影響で、MRI検査に時間を要したため、再申請まで2ヶ月かかったが、頚椎に的を絞った完璧な医証が整った。
通院回数はやや物足りないものの、それを補うだけの受傷機転だったため、「事故の衝撃の大きさ」と「症状の一貫性」を主張したところ、わずか40日で認定が覆り、14級認定に。おまけで(どうでもいい)胸椎まで14級がついたのはいつものことである。
本件被害者はケガの痛みに加え、購入したばかりの車が今回の事故で廃車になってしまったため、ひどく落ち込んでいた。是が非でも14級を勝ち取り、良い解決ができればと思っていたので、大満足の結果となった。