自らの症状をしっかり医師に伝え、後遺障害診断書に記載頂き、後遺障害の審査に付す、この当たり前と思える手続きは、自動的に進むものではありません。相手保険会社の担当者は、骨折なきケガですと、後遺障害など起きるはずがないものと、サクサク事務的に示談・解決に進めます。私はそこに悪意はないものと思っています。常識的に、捻挫・打撲の多くは3か月も治療を続ければ軽減するものです。
ただし、物事には例外があるもの、中には症状が長引く被害者さんもおります。ここで、立ち止まって、誰かが正しい誘導をしなければなりません。本件は、ギリギリで後遺障害14級にできました。
また、もう一つの論点として、自賠責保険の14級審査の着眼点を再確認です。長引く打撲・捻挫には、それ相当の事故の衝撃が無ければ説得力を失います。また、リハビリ努力=通院回数もその裏付けとなります。バンパー交換程度の小損害での認定は困難です。また、車が大破・廃車となっても、月数回程度の少ないリハビリ日数では深刻度は下がります。いずれも、骨折していれば話は別です。
それだけ、打撲・捻挫は軽傷、後遺症など残らないと思われるのが常識なのです。
9回裏逆転さよならホームランです!
併合14級:頚椎・腰椎・膝関節捻挫(40代女性・山梨県)
【事案】
自動車にて直進中、コンビニの駐車場に入ろうとしてきた右折車に衝突され、横転。直後から頚腰部痛はじめ、痺れ頭痛等、強烈な神経症状に悩まされる。さらに、膝を強打、その痛みもしつこく残った。
【問題点】
相談を受けた段階で、既に相手方から60万円余りの慰謝料の提示が届いており、最終治療日からも1ヶ月以上経過していた。後遺症がまったく無視されたまま、示談を迫られていた。
【立証ポイント】
ご相談を受けた翌日に急いで病院同行し、久しぶりの主治医にMRI検査を懇願、なんとか検査していただけることとなった。検査結果も年齢変性はあるものの、特筆すべき点はなかったが、幸い通院回数はばっちりだったため、疼痛のみの自覚症状をできるだけ克明に盛り込んでいただいた。
また、症状固定日を「打切り日」に遡って後遺障害診断を作成していただいた。本件後遺障害申請を補強すべく、年齢変性のMRI画像打出しと、横転してグシャグシャになった車の写真等を添付した結果、2ヶ月弱で頚部、腰部、膝関節にそれぞれ14級認定となった。これで、賠償金は200万円近く増額となるだろう。
やはり、自賠責の14級審査はMRI検査や神経学的所見等は二の次で、通院回数と受傷機転(事故状況、車の修理費や損傷具合も)を重要視していると感じる案件となった。