【事案】
被害者は歩行者、交差点で飛び出して優先走行の大型車両と出合い頭衝突、受傷した。主な診断名は脳挫傷、外傷性くも膜下出血、上顎骨骨折、歯牙欠損。記憶と認知機能の低下、情動障害を残す高次脳機能障害に陥った。付随して、左半身麻痺、嗅覚・味覚障害を併発した。他にそしゃく・開口障害の兆候もあった。
事故状況から加害車両の任意保険の対応なく、自賠責保険しか頼れない状態。最大の問題は外国人であるが故、頼れるのは家族・親戚だけで、諸々の手続きが手詰まりの状態で相談会にいらした。
【問題点】
元々、来日すぐ日本語学校を卒業しており、日本語をマスターしていたはずが、まったく日本語を話せなくなった。母国語も意味不明な言動という。明らかに重度の情動障害、性格変化、易怒性、幼児退行がみられた。また、本人が自覚しているか怪しい味覚・嗅覚障害、そして半側空間無視の兆候から、それぞれ該当する検査が必要であった。しかし、多くの検査は日本語か英語、せいぜい中国語版しかなく、検査の徹底は無理であった。
当然、どこの法律相談、弁護士事務所も尻込みして受任して頂けない。賠償金の目途が立たず、日本語のコミュニケーションも困難、このような案件を受任できる事務所は、日本で秋葉事務所しかないと断言する。
【立証ポイント】
これこそ、厳密な過失減額がない自賠責保険が勝負を決する。幸い、国内在住のご親戚が日本語堪能であり、その協力で脳神経外科、整形外科、リハビリ科、耳鼻科、口腔外科、歯科を何度も往復、その病院同行回数は13回を数えた。さらに、カルテ開示、健保レセプトの開示なども加算された。外国人である故の不利はこれだけではない。日常生活状況を克明に掴むため、家族とも通訳を介して何度も質問を繰り返し、できるだけの完成度とした。これら、およそ8か月の調査を決行の末、審査に付した。
審査側の自賠責・調査事務所も大変だったと思うが、それでも当方の努力から、審査期間はわずか3か月半で済んだとも言える。傷害部分の120万円も、治療費を差し引いた残りの分も支払ってくれた。
自賠責保険、高次脳機能障害を熟知した者だけが受任できる案件と言える。困っている類似ケースの被害者さんは他にもいるはず。どんな不利な状況であろうと、妥協なく徹底した調査を行える事務所に巡り会えることを祈るのみ。
※ 併合の為、分離しています。
(令和2年11月)