これは少し前の相談でした。かつて、学生時代の仲間で、マイ・リトル・ラバーのヴォーカル アッコさん似の(姓は伏せますが)亜季子さん、通称アッコさんがおりました。彼女は卒業後、バリバリの正社員で活躍中です。その亜希子さんが結婚するにあたって、私に改まって”結婚に関して”相談があると・・???
その前に、夫婦別姓について少し勉強します。
法務省では、平成3年から法制審議会民法部会において、婚姻制度等の見直の審議を進めています。婚姻後、夫婦として籍を一緒にするが夫婦がそれぞれの姓を名乗ることができる「選択的夫婦別氏制度」(※1) の導入については、これまでも政府が策定した男女共同参画基本計画に盛り込まれるも、未だ国会に改正案は出されておりません。世論調査(※2)を実施するなど、慎重に検討していると思います。
※1 選択的夫婦別氏制度とは? (法務省ホームページより)
選択的夫婦別氏(べつうじ)制度とは、夫婦が望む場合には、結婚後も夫婦がそれぞれ結婚前の氏を称することを認める制度です。 現在の民法のもとでは、「結婚に際して、男性又は女性のいずれか一方が、必ず氏を改めなければなりません。」そして、現実には、男性の氏を選び、女性が氏を改める例が圧倒的多数です。ところが,女性の社会進出等に伴い、改氏による社会的な不便・不利益を指摘されてきたことなどを背景に、選択的夫婦別氏制度の導入を求める意見があります。 法務省としては、選択的夫婦別氏制度の導入は、婚姻制度や家族の在り方と関係する重要な問題ですので、国民の理解のもとに進められるべきものと考えています。
※2 世論調査の結果
平成29年に実施した「家族の法制に関する世論調査」の結果では、「婚姻をする以上、夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきであり、現在の法律を改める必要はない」と答えた方の割合が29.3%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望している場合には、夫婦がそれぞれ婚姻前の名字(姓)を名乗ることができるように法律を改めてもかまわない」と答えた方の割合が42.5%、「夫婦が婚姻前の名字(姓)を名乗ることを希望していても、婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻によって名字(姓)を改めた人が婚姻前の名字(姓)を通称としてどこでも使えるように法律を改めることについては、かまわない」と答えた方の割合が24.4%となっています。
世論調査では、「夫婦別姓OK」が有利でしょうか。職場でも「寿退社」(昭和の響きがします)とは限らず、結婚後も在職するケースが増えると思います。名前が変わってしまうと、仕事上、何かと不便です。実際、周囲の女性弁護士さんのほぼすべて、結婚後も旧姓のまま業務を続けています。専門的な職業に就く者にとって改姓は困ります。松任谷 由実(ご存知旧姓 荒井)さん位しか例外を知りません。すると、戸籍上は同姓であっても、通称として周囲へ別姓を名乗っていれば済む事との意見もあります。しかし、これにも問題があるようで、日弁連のHPでは今月の会長声明で以下のように指摘しています。
※3 ところで、政府与党内に、女性の職業上の不利益回避のためなら戸籍法を改正して旧姓を通称として認めればよいとする案もあるようである。しかし、このような案では、個人が2つの姓を持つこととなり、社会的・経済的に混乱が予想される。また、混乱を防ぐために旧姓しか使用できないとするのであれば、社会的には選択的夫婦 別姓制度と変わらず、なぜ戸籍上の同姓強制に固執するのか疑問である。
確かに夫婦同姓の維持に固執する意見に、合理的な理由はないように思います。「夫婦は同姓であるべき!」との意見は、ある種の原理主義のようですね。
現法律は、それ以外にも問題があります。これが掲題のテーマです。その問題とは・・
ここで、亜季子さんの”結婚に関する”相談に話を戻します。この手の相談は苦手ですが、とりあえず話を聞きました。・・・結婚自体はおめでたい事に違いありませんが、一つ難題があるそうです。結婚相手の旦那さんの苗字が「和田」なのです。そして、旦那さんのご家族は普通に「嫁は和田の姓」になると思っているそうです。
そう、つまり、結婚後は、和田 アキ子 に。
「いっそ、名前の亜希子も アキ子 表示にしたら?」とアドバイスしたら、笑って許して ♪ は くれず、グーで殴られました。
現在の法律では、どちらかの姓にする決まりですが、一人息子の和田さんを嫁の姓になど、和田家が許しそうにありません。理由が「和田アキ子になるのが嫌なのでこちらの姓に」とも言えず・・・一時、婚姻がこう着状態にまでなったそうです。(秋葉「知らんがな」)
結局、戸籍上は和田ですが、職場や周囲に対して旧姓で表示するようにしました。しかし、病院や役所ではそうも行かず、「和田 アキ子さ~ん」と呼び出しがアナウンスされます。そのたびに、周囲が注目、どよめくそうです。結婚以来、高いヒールの靴も履けなくなったそうです。(もぅいい加減、和田アキ子さんに失礼でしょ)
世の中には、このように結婚の改姓でとんでもない事(?)になっている人が大勢いるかもしれません。これも、法改正の背景として後押しできないでしょうか。また、亜季子さんにとっての朗報は、法改正されたら旧姓に戻すことが可能になるそうです(※4)。
※4 選択的夫婦別氏制度が導入されれば、法改正前に結婚した夫婦でも、「一定期間内に戸籍法の定める手続に従って届け出る等の要件を満たすことによって、別氏夫婦になることができる」とされています。
まだ、法改正の内容が決定したわけではありませんが、恐らく、戸籍上も旧姓に戻せそうです。
これについて、ご主人の和田さんも改姓に理解、
「アッコにおまかせ」するそうです。
ハッ!