士業同士の紹介連鎖、ネットワークにより、相談者様・依頼者様からのすべてのご要望にお応えする、これこそ、ワンストップサービスです。これは、商売上の目的にかなうものですが、最大の受益者は依頼者様=被害者に他なりません。
事務所開業以来、弁護士と連携して交通事故被害者に対応するスキームを推進してきました。おかげさまで、日本各地の16弁護士事務所と協業することができました。弁護士事務所によって、毎月数件のご依頼もあれば、年に1件、2~3年に1件の場合もあります。また、弁護士先生同士の紹介連鎖から、ご依頼を受けることも多くなってきました。良い仕事が評価されれば、ご依頼は続くことになります。
一方、行政書士の交通事故業務に疑問の目も向けられています。加害者あるいは加害者側保険会社との交渉は明らかに代理行為ですから、弁護士の専権業務となります。これは、行政書士の職務外であることに異論はありません。一般的に事故の状況や、医療内容に関する事実調査は調査事務ですから、行政書士のみならず、無資格者でも業として(商売)出来ます。しかし、この区分けを複雑化しているのは、自賠責保険への請求業務です。自賠責保険請求に関する調査・書類収集は事実認定・調査事務の範疇と思いますが、保険の性質が「賠償請求行為」になるから法律事務であるとの見解もあります。ここが長らくグレーゾーンのように、くすぶった問題でした。
平成26年6月の高裁判決で、某行政書士の業務が非弁護士行為と判断されて以降、このグレーゾーンは法律事務との向きが強くなったようです。しかし、判決文をよく読めば解る通り、この行政書士は、賠償請求行為と自賠責請求行為をまとめて契約していたところ、それが「報酬請求上不可分なので、まとめて法律事務ですよ」と判断されたに過ぎません。それでも弁護士側の反響、「自賠責保険への請求業務は法律事務と判断された!(だから行政書士は自賠責業務ができない)」と断定口調、まるで勝利宣言?から、業際問題の匂いを強く感じます。
この判決以降、交通事故業務を掲げる行政書士は実に大人しくなったようです。中には、行政書士の看板から調査会社に挿げ替えて、非弁の視線をそらしている書士もいるようです。そもそも、このような非弁の視線を向けられるようになった理由は、確信犯として違法行為=賠償に手を染める書士が多かったからです。または、一部地域の書士会が民事業務への進出を目指し、法律解釈で弁護士会と敵対したことも影響していると思います。
行政書士の業務拡大や将来像を見据えたこれら書士会の行動、その志は良し、非難するつもりはありません。しかし、ケンカを売るなら勝ち目を考えるべきとは思います。行政書士とは法律に関わる業務ながら、行政手続きの実務家です。事実、公務員上がりのいわゆる特認書士が多く、彼らは行政事務に卓越した人材ではありますが、法律には素人です。また、多少法律に絡む試験をパスした合格者でも、その半数も行政書士になるわけではありません。
やはり、法律問題には謙虚であるべきと思います。弁護士会と業際問題の交渉、法律論争をするのであれば、法律の専門家である弁護士を雇い、法律家同士の戦いにするべきです。法的見解を固め、理詰めでじっくり丁寧に交渉を続けていけば、時間はかかりますが道は開けるはずです。双方の会の申し合わせや、業務の線引きが明示されれば、業際の指標が成立します。少なくとも、一部の跳ねっかえり書士の無謀な訴訟、その結果の敗訴(不利・不毛な判例)を抑制できます。これこそが、謙虚な姿勢、そして勝ち目のある戦いではないでしょうか。
話を戻しますが、行政書士の代書権は他の士業との協業で活きるものです。世の中、紛争化する前、あるいは紛争を未然に防ぐ調査事務・法律事務は山ほどあります。すべてに弁護士の手が及ぶとは思いません。だからこそ、士業相互の連携業務によって、依頼者ファーストを実現すればよいと思います。士業同士は業際で敵対するのではなく、仕事を適材適所に分化して共に依頼者を助けることが理想です。秋葉事務所は10年間これを実践してきたと自負しています。
業務に順法、業際の線引きを明確にして多くの弁護士先生の理解を促し、何より、交通事故被害者から最大限に評価される仕事を積み重ねていくこと、これからも私達が進むべき道と思っています。