遷延性意識障害に陥った場合、患者さんと意思の疎通はほぼ不可能です。本件も脳外傷で受傷から意識不明、医師の判断も「奇跡でもない限り・・・」でした。
しかし、意識障害の状態でも、脳波がわずかに反応を示す事あります。これが完全な脳死との違いでもあるのですが、脳は生きているのか? そのような期待を持ってしまいます。実際、体が動くことはなく、目を開けず、話すことができなくとも、例外的に耳だけが聞こえており、脳が働いていて意思がある・・・もちろん、極めてレアケースですが、このような症例もあるそうです。
漫画ブラックジャックでも、そのエピソードがあります。(コミックス25巻『信号』)
意識が戻らない状態でも、家族は簡単に諦めきれないのです。
今後、医学の進歩を切望する分野でもあります。
秋葉事務所では、実際にご家族と共に数名の患者さんに付き添ってきました。知識や理論だけ、受任経験すらなくば、本当の意味で遷延性意識障害を理解できないと思います。
別表Ⅰ 1級1号:遷延性意識障害(60代男性・埼玉県)
【事案】
歩行中、後方からの自動車の衝突を受け、脳挫傷、急性硬膜下血腫で救急搬送された。以来、意識不明の状態に。
【問題点】
意識の回復は絶望的と診断されるも、あきらめきれず、家族とあらゆる治療を検討した。
賠償上の問題点は、退職後の事故であった為、逸失利益が見込めないこと。
他に、成年後見人の設定など、待ったなしに諸事務を進める必要があった。
【立証ポイント】
直ちに連携弁護士が成年後見人の設定を進めた。弊所は症状固定を急がず、ご家族の希望で「神経の電気刺激」などを試みた。しかし、本人の衰弱を見るに家族も決断、1年2ヵ月後に転院先の医師との面談・打合せを経て、症状固定とした。
問題なく別表1の1級1号の認定となったが、その後、みるみる体力的に消耗、体重も落ちていき、示談を前に亡くなってしまった。すると、将来介護料の請求は下げざるを得なく、連携弁護士は裁判で本人慰謝料と家族慰謝料の増額を果たすに留まった。それでも、受傷から裁判・和解までご家族とニ人三脚、できるだけのことは尽くせたと思う。