(1)一側の腎臓を失ったもの
① 一側の腎臓を失い、腎機能が高度低下していると認められるものは、7級5号が認定されます。
腎機能が高度低下しているとは、糸球体濾過値(GFR)が31~50 ml/分であるものを言います。高度低下は、腎機能の低下が明らかであって、濾過機能の低下により、易疲労性、ホルモンの産生機能の低下により貧血を起こし、動悸、息切れを生じるような状態です。
② 一側の腎臓を失い、腎機能が中等度低下していると認められるものは、9級11号が認定されます。
腎機能が中等度低下しているとは、糸球体濾過値(GFR)が51~70 ml/分であるものを言います。中等度は、高度に至らないまでも同様の症状が生じる状態です。また、健常人と腎機能低下の者(血清クレアチニン1.5~2.4mg/dl)を比較すると、 前者に比べ後者は運動耐容能が有意に低く、嫌気性代謝閾値が約4.3METsという報告がなされています。この知見を踏まえると、おおむね高度低下では、やや早く歩くことは構わないが、 早足散歩などは回避すべきと考えられています。
③ 一側の腎臓を失い、腎機能が軽度低下していると認められるものは、11級10号が認定されます。
腎機能が軽度低下しているとは、糸球体濾過値(GFR)が71~90 ml/分であるものを言います。 軽度低下は、腎機能の予備能力が低下している状態であり、基本的には無症状ですが、過激な運動は避けるべき状態です、
④ 一側の腎臓を失ったものは13級11号が認定されます。
(2)腎臓を失っていないもの
① 腎機能が高度低下していると認められるものは、9級11号が認定されます。
腎機能が高度低下しているとは、糸球体濾過値(GFR)が31~50 ml/分であるものを言います。
② 腎機能が中等度低下していると認められるものは11級10号が認定されます。
腎機能が中等度低下している」とは、糸球体濾過値(GFR)が51~70 ml/分であるものを言います。
以上を整理すると下表の通りです。
腎臓の障害は、腎臓の亡失と腎臓を失っていないものに分類、 糸球体濾過値で後遺障害等級を認定することになりました。以前は腎機能に問題があっても、亡失以外は門前払いの状況でした。親切な改正と考えています。
GFRの値は、小数点以下を切り上げます。 このことも、泌尿器科の主治医はご存知ありません。いつの場合でも、知っている被害者だけが、有利にことを進めることができるのです。
(3)慢性腎盂腎炎と水腎症について
腎盂腎炎は、細菌の感染により腎盂腎杯のみならず、腎実質にも病変がおよぶもので、 交通事故受傷では想定され難いものです。
水腎症は、尿路通過障害の結果、腎盂腎杯の拡張と腎実質の萎縮、腎機能障害をきたした状態ですが、 清潔間歇自己導尿が広く行われるようになった今日では、症例が激減しています。症例ごとに、本件交通事故との因果関係を踏まえながら、個別に対応しています。