通勤経路の逸脱? これも定番の相談です。寄り道の内容から検討されます。
実際、私の損保時代、お客様が加害者で、仕事帰りの会社員に大変なケガ(高次脳機能障害)を負わせてしまった交通事故がありました。その被害者さんにも大きな過失(70%)がありました。この場合、加害者から全額の賠償金が得られませんので、労災請求は必須です。しかし、「帰宅の寄り道の性質から認めてくれなかった」そうです。きっと、何か基準にひかっかったのでしょう。それも大した理由ではないと思います。些細なことで運命を分ける、”労災不適用・被害者”としか言いようがありません。
(Q)下車駅を乗り越し、徒歩で帰宅中の交通事故受傷は通勤災害となるでしょうか?
先日、会社の営業部の山本さんが4時間の残業の後、帰宅途上に会社近くでラーメンを食べ、電車に乗って帰宅しました。 細かいことですが、会社では夜食としてカツ丼を提供していました。 車内で寝過ごして、下車駅を1つ乗り越してしまいました。 下車駅に戻る電車待ちが30分以上であったところから、徒歩で帰宅中、交通事故受傷したのです。 山本さんの通勤災害の適用は可能でしょうか?
(A)通勤経路の逸脱について、合理的な理由が成立すれば、通勤災害は適用されます。
本件も労災の杓子定規な体質に付き合って、2つのポイントから検証しましょう。
① まず、下車駅を乗り越し、徒歩で自宅に向かったことが、合理的な経路、方法であったのか?
② また、カツ丼を食べているのに、ラーメンを食べたことが、日常生活上必要な行為であったのか?
>① 本件の場合、下車駅を乗り越したのは、単に居眠りをしていたのが原因ですから、通勤行為は継続しています。 「次の電車を30分も待つ位なら、徒歩で帰宅する。」は、理由が合理的なので逸脱にはならないでしょう。
その他「最近メタボが気になって、健康の為に一駅前で降りて歩いて帰る」・・・日常的にそうしていれば、OKとなります。「駅前に駐輪していた自転車が盗まれて、仕方なく歩いて帰った」 ・・・これも、”やむを得ない事由”から問題がなく、合理的な説明になります。
合理的な説明さえ通れば、通勤災害は適用される可能性があります。何か、請求者の説得力にかかっているように思えてきます。
>② 残業が深夜に及び、仮に会社で夜食をとったとしても、それなりの時間が経っています。これも程度問題からOKと思います。
私がもし役所で労災を担当していたら、「ラーメンとカツ丼を同時に食べる人だって結構いるじゃないの、 残業で腹が減ったから食った、ただそれだけのことで、どこにそんな深刻な問題があるのよ?」と議論を終えます。そんなに暇ではありません。
確かに労災の不正請求を排除するために、厳格な判断が必要かも知れません。この程度のことでも、日常生活上必要かを丁寧に検証するのでしょう。
お役所はいつの時代も杓子定規、肝に銘じなければなりません。