持病のてんかんもありますが、交通事故外傷の世界では、高次脳機能障害を伴う頭部外傷、脳外傷の被害者さんにみられます。事故後、発作が起きた場合はもちろん、脳波検査で異常波が検出されれば、投薬を中心に医師の定期的な診察が続きます。医師の多くは、最初の発作から2年の観察を続ける必要を示唆します。てんかんは、私達の仕事上、安易に症状固定に進めなくなる厄介なものです。
どのような薬が選択されているか? 医師の定期的な診察だけではなく、薬の性質と役割から、再発の危険性と症状固定日の想定をすることになります。久々の薬シリーズですが、てんかんの代表的な薬を確認したいと思います。文中、てんかんの類型、種類に関する専門用語を調べました。業務日誌は、事務所の勉強会・発表の場でもあります。
【1】フェニトイン (PHT)
商品名:アレビアチン、ヒダントールアレビアチン
部分てんかん(※)の発作、全般てんかんの強直発作などに有効です。てんかんが重なる状態に注射として使用されます。てんかん発作を誘発する脳内の電位依存性ナトリウムチャネルを阻害するなどして興奮性伝達を抑制、神経膜を安定化させる効果があります。また、血中濃度が変動しやすい性質があり、血中濃度のモニターが役に立ちます。
稀にアレルギーを示す人がいます。量が多いと眠気、ふらつき、複視などの副作用が生じることがあり、歯ぐきが腫れることがあります。
過去の依頼者さんの経験では、発作を繰り返す患者さんに処方されています。
※ 部分てんかん・・・意識障害の伴うタイプと伴わないタイプがあります。痙攣などの運動が身体の一部にみられ、しばしばそれが他の部位に連続的に広がっていく運動性の発作は、口周などに痙攣が始まることが多く、手足→口周→同じがわの身半分→全身などにひろがり、全身に痙攣が及んだところで意識を失うのが一般的です。また身体の一部に起こった異常感覚がほかにひろがる感覚性の発作もあり、腹痛、下痢などの自律神経症状が発作的にみられるようなものもあります。
【2】カルバマゼピン (CBZ)
商品名:テグレトール、カルバマゼピン
部分てんかんの発作に第一選択薬として使用されます。全般てんかんの発作は悪化することがあります。精神症状の改善にも効果が期待できることが報告されています。気分調整剤、三叉神経痛の薬としても使用されます。
グレープフルーツの摂取により、血中濃度が上昇することがあります。様々な薬物代謝酵素の誘導作用があり、併用している抗てんかん薬の血中濃度を低下させてしまうことがあります。稀にアレルギーのある人があります。量が多いと眠気、ふらつき、複視などの副作用が生じることがあります。
経験では、発作は起きていないが、脳波に異状が検出された患者さんに処方される傾向です。商品名のテグレトールで知られています。
【3】フェノバルビタール (PB)
商品名:フェノバール、フェノバルビタール、ワコビタール、ルピアール
注射剤として、てんかん重積状態(※)に使用されることがあります。坐薬もあります。眠気、気分低下などの副作用がみられることがあります。
※ てんかん重積状態・・・てんかん発作が10分以上継続すること
【4】プリミドン (PRM)
商品名:プリミドン
体内でフェノバルビタールとフェニルエチルマロナミドに代謝されます。プリミドンの抗けいれん作用の多くは、体内で生じたフェノバルビタールによるものと考えられています。
【5】ゾニザミド (ZNS)
商品名:エクセグラン、ゾニザミド
部分てんかん及び、てんかん全般の治療薬として有用です。併用している抗てんかん薬の血中濃度に影響を及ぼすことが少ないといわれています。食欲低下、結石、発汗減少、気分低下などの副作用が生じることがあります。
経験では、他のてんかん薬と併用されることが多いようです。
<神経医療センターさま、日本神経学界さま HP引用>