前日の①と同じ寛骨臼骨折です。①は脱臼を伴った骨折ですが、骨盤の骨折状態から本件の方が深刻な障害を残しました。
さらに悩ましいのは、長い治療期間から、股関節の可動域が中途半端な数値まで回復していることです。屈曲・伸展は左右差3/4以下制限に及ばず12級レベル、内転・外転も10級を逃しそう。つまり、12級7号に落ちてしまいます。そこで、内旋・外旋に注目、この数値で1/2を計測、参考数値による繰上げで、なんとか10級に収めることに成功しました。
事務所内には可動域計測用の診察ベットが設置されています。そこまでやらないと、可動域で正確な等級を取りこぼしてしまいます。結果的に数百万円を失うのです。
10級11号:寛骨臼骨折(50代男性・東京都)
【事案】
バイクで交差点を横断中、対抗右折自動車と衝突。右股関節の寛骨臼、右鐘骨を骨折した。
【問題点】
この部位の骨折は関節内骨折であり、多くの場合で股関節の可動域に制限が残る。治療途中で病気になったこともあり、2年以上の長いリハビリの成果から可動域は中途半端に回復傾向、症状固定を急ぐ必要があった。
【立証ポイント】
股関節と足関節は別の病院で治療が続いており、それぞれの医師に面談、診断書の記載を頂いた。特に股関節の可動域、屈曲と伸展は12級、内転・外転は10度足らずで10級を逃す数値であり、内旋・外旋の参考数値に勝負をかける必要があった。
CT画像を観ると、骨折様態から内転の制限が読み取れる。そこで、事務所内で計測の練習をしてから医師の診断・計測に望んだ。医師も秋葉と同様の読影判断であり、正しい計測から数値もほぼ練習通りの数値となった。
可動域制限は画像からの判断であり、計測時に可動域を装うことなど出来ません。それでも、事前に可動域の計測をシミュレーションしておけば、医師の計測間違えを防ぐことができます。特に参考数値の計測で運命が変わる場合、シビアな作業となります。