【事案】
旅行先でレンタカー搭乗中、直進道路で信号待ちしていたところ、後続車の追突を受ける。直後から頚部痛、手のしびれ、頭痛、耳鳴り等の他、異常に鼻づまりが生じ、しばらくしてから嗅覚や味覚が喪失していることに気が付く。
【問題点】
鼻の骨折はなく、神経や脳を損傷していないにもかかわらず味覚と嗅覚を喪失しているという。相談を受けた際には嘘をついている様子はなかった。相手保険会社は味覚嗅覚の喪失については信用しておらず、味覚嗅覚の治療費を出さなくなってた。
【立証ポイント】
まず、基本的検査を進めた。味覚については電気味覚検査とろ紙ディスク法検査、嗅覚についてはアリナミンテストとT&Tオルファクトメーター検査を実施した。
この点、アリナミンテストは通っていた耳鼻科の病院で実施されていたが、フルスチルアミンによるものと、プルスチルアミンによるものとに分けられ、調査事務所が重要視している検査はプルスチルアミンの方である。本件病院ではどちらで行われているのか医師も不明であった。やむを得ず、通院を継続していた整形外科に上記検査をやって頂ける病院を紹介して頂き、検査を実施した。
結果、味覚検査双方を喪失している検査結果が出た。紹介元の医師だけではなく、以前通っていた耳鼻科にも検査結果を持参して診察して頂いた後、症状固定した。
器質的損傷が認められない状況での味覚嗅覚の喪失であるため、ある種、むち打ち14級と同様、信じて頂くしかないので、後遺障害診断書や上記検査結果だけではなく、事故後の症状について詳しくまとめた申述書を調査事務所に提出した。
結果、非常に長い審査期間を経て嗅覚の喪失は認められたが、味覚の喪失は認められなかった。双方の等級が認められた場合、それぞれ12級相当が認められ、併合11級になるが、器質的損傷が認められない場合、少し厳しい。毎度、風味障害(匂いがしないと、ある程度、味も無くなる状態)として、一くくりにされるのか、嗅覚のみが認められる傾向がある。やはり、少し疑いが残っているのか?。
(平成28年3月)