(1)脊柱の運動障害

 脊柱の運動障害形は、上・下肢の 2 関節の用廃の 6 級に比して、過大な評価であることを理由に、認定基準が大きく改正されて数年が経ちました。この間、公表されていませんが、可動域制限についても一定の条件があることが判明してきました。説明にはそれらを補足しています。
 
■ 頚部の可動域制限

 従来は、圧迫骨折、固定術により、頚椎もしくは胸腰椎の可動域が 2分の1以下に制限されていれば、 6級 5号が認められていました。先の改正では、脊柱全体が強直またはこれに近い状態でないと 6級 5号は認められません。

 計測法も変更、左右屈が廃止となり、新たに左右の回旋が採用されました。

 頚部、胸・腰部のいずれかの場合は、 2分の1以下の制限で 8級 2号となります。しかし、可動域の数値だけで単純に認定はありません。可動域の数値を裏付ける、相当の変形・硬直がなければダメなのです。手術をした場合でも、2箇所の固定、つまり3椎体以上にまたがる固定術が成されていなければ、 8級 2号の認定はありません。

 結果として、大多数が 11級 7号の認定になったと考えられます。


頚部可動域
主要運動
正常値
6 級 5 号
8 級 2 号
前屈
60 °
10 °
30 °
後屈
50 °
5 °
25 °
右回旋
70 °
10 °
35 °
左回旋
70 °
10 °
35 °

合計

250 °

35 °

125 °以下

 
 強直とは、全く動かないこと、それに近い状態とは、正常可動域の 10 分の 1 以下のことです。

 頚部の前屈は 60 °が正常値、 10 分の 1 以下は 6 °となりますが、 5 °単位で切り上げて表示しますから 10 °となります。 6 級 5 号は頚部+胸腰部のいずれもが、強直またはそれに近い状態で認定されます。頚部だけ、胸腰部だけではありません。
 
■ 胸腰部の可動域制限

 注意として前屈なら第4~5の固定術、もしくは相当の変形が残らなければ、可動域制限の数値は疑われます。通常、第1~3の腰椎が固定されても、正常値の半分も可動域が制限されないからです。

 この理屈は頚部も同じで、首の回旋(左右に回す)制限の場合は、第1~2頚椎が変形・硬直、もしくは固定術をされなければ、理論上、半分も曲がらなくなったとはみられません。首を左右に回す動きは、第1~2頚椎が司っているからです。

胸腰部の可動域
主要運動
正常値
6 級 5 号
8 級 2 号
前屈
45 °
5 °
25 °
後屈
30 °
5 °
15 °
右回旋
40 °
5 °
20 °
左回旋
40 °
5 °
20 °
合計
155 °
20 °
80 °

 
 8級以上の認定は、本人が曲がらないと訴えても、医師が制限された数値を記録しても、やはり、決め手は画像です。物理的に曲がらないであろう状態を画像で示さなければなりません。さらに、各脊椎の運動機能との整合性も求められます。

 画像読影と運動機能の理解、これら可動域制限の全般に言える基本をマスターしなければ、等級の予断はできないのです。