鎖骨の骨折は手術でプレート固定をすることにより、変形なく癒合させている傾向です。しかし、プレート固定術が一般化する以前は、鎖骨はほって置いてもくっつくし、多少、変形しても日常生活に影響ないものとして、医師も積極的な治療をしないものでした。
←プレート固定
したがって、プレート固定術は現在であっても高齢者の場合、手術・麻酔の負担から避ける傾向にあります。すると、クラビクルバンドで外固定しますが、多くの場合、変形が残ります。それを知っているのか、いないのか?これが運命の分かれ道です。
医師は臨床上、「この程度の変形は”変形癒合”とは言えない」と判断します。また、示談前に保険会社が親切に「鎖骨に変形が残っていませんか?」と心配してくれる事などないのです。
12級5号:鎖骨骨折(80代女性・神奈川県)
【事案】
交差点を歩行横断中、対抗左折車に衝突された。骨折は左鎖骨骨幹部、左肋骨、両恥骨。肋骨と恥骨は亀裂骨折なので保存療法、鎖骨も高齢から観血的手術によるプレート固定を避け、クラビクルバンドで固定とした。
以上から、相談を頂いた時点で「鎖骨の変形=12級5号」を予想した。
【問題点】
骨折の部位、状態から通院は少なくなる。そして、骨癒合さえ果たせば治癒として後遺症を感じさせない。実際、年齢に比して回復良く、ご家族も含めて後遺症の自覚はまったく無かった。
誰かが正しい誘導をしなければ後遺障害を見逃すケースです。そして、鎖骨の変形が外見上に現れているか否かが勝負となる。
【立証ポイント】
比較的、受傷初期から対応したため、医師面談にて変形の予断と適切な時期に症状固定することを打合せしておいた。7ヵ月後の骨癒合を待って、症状固定とした。
外見の写真を撮影して提出、予定通り、鎖骨変形の12級5号とした。被害者さんにとっては思いがけない賠償金の増額となった。