被害者請求の場合、頚椎捻挫(ムチウチ)や腰椎捻挫を基準とすると、提出書類として、後遺障害診断書、通院期間分の診断書・診療報酬明細書(レセプト)、画像(フィルムやCD)、自賠責保険請求用の支払請求書、印鑑証明書、(弁護士等に委任している場合にはその旨の委任状)、事故状況報告書、事故証明書、が原則としてあげられます。事前認定の場合も基本的には提出書類は同じです。保険会社が主に行っている後遺症(後遺障害)の申請方法は事前認定です。事前認定の場合も基本的には提出書類は同じですが、交通事故の被害者に提出を求めるのは、後遺障害診断書です。何故なら、その他の書類(特に診断書や診療報酬明細書)に関しては基本的に保険会社が自賠責に請求するために集積しているからです。事前認定をする際、症状固定して後遺障害診断書を被害者から受け取ると、これら書類をすべて提出して申請をする流れになります。
※ ただし、自賠責に請求できる治療費は120万円までなので、それを超えると自賠責に請求できないことから書類の集積が途中で終わっている場合があります。その場合、保険会社は不足分の書類を改めて集積します。
多くの交通事故で発症する頚椎捻挫(ムチウチ)、腰椎捻挫の場合、治療費が120万円を突破することは少ないので、書類は集まっていることが多いです。しかし、保険会社(担当者)の多くは頚椎捻挫(ムチウチ)、腰椎捻挫では簡単に後遺症(後遺障害)が認められないと考えております。そのため、申請のための書類集積を速やかにやることは考えにくいとみております。むしろ、このような事情から申請しても後遺症(後遺障害)が認められることはないので早く案件を処理したいと考えるのが通常です。
そもそも、保険会社は早く治療費を打ち切りたいと考えております。
実際の案件で、ムチウチで事前認定をした依頼者の交通事故に関する書類を保険会社から集積したところ、診断書等の中に、「医療照会・回答書」がありました。この書類には依頼者の症状について改善傾向にある旨の記載が多々ありました。日付からすると、症状固定後に調査事務所から病院に依頼していることがわかりました。この書類については依頼者も認知しておりませんでした。
何故このようなことになったのでしょうか。
これは、事前認定の申請者が保険会社であったので、調査事務所は保険会社に医療照会・回答書を依頼する流れになったのです。これでは、依頼者は何を書かれたのかをなにも確認できず、しかも医師の診断を受けずに依頼者の現在の状況について書いていることになります。
これがもし、被害者請求の場合、申請者は被害者(弁護士を依頼している場合には弁護士)に依頼がきます。そのような場合、依頼者側は医師に依頼する際、医師とお話し(診断)した上で記載して頂くことができ、内容を確認できることになります。
これまで申請者が保険会社なのか被害者なのかで差が出ることをいくつか述べさせて頂きました。
結論として、書類の集積は大変ですが、後遺症(後遺障害)が認められた際に等級に応じた自賠責基準分の金額が自賠責から被害者に振り込まれること、申請時の書類について依頼者側が確認できること、から総合的にみて被害者請求の方が交通事故被害者には有利に働くことになると考えております。
仮に被害者請求をしたくても、書類の集積が面倒であれば、被害者請求をやってもらえる士業者を探してみてください。以前にも述べましたが、一部士業者は事前認定のみしかやらないので、契約前に確認してみて下さい。