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 人身傷害特約と無保険車傷害特約 その2

 
 前回の記事で、人身傷害特約と無保険車傷害特約との比較を説明しました。

 今回は、以下の事例(相手方加害者が完全な無保険者である場合)から、どのように保険を使ってお金を回収するのかを検討したいと思います。

 <事例>
 Aさんは自転車で横断歩道を赤信号であるにもかかわらず進み、無保険のBさんが横断歩道上でAさんをはねてしまいました。Aさんは脳挫傷で後遺症(後遺障害)が残りました。Aさんの損害額は、裁判所の基準で合計1億円になりました。しかし、Aさんにも5割の過失が認められました。
 しかし、Bさんは保険に入っておらず、貯金もまったくありませんでした。そこで、幸いにもAさんには人身傷害特約(支払限度額は5000万円)と無保険車傷害特約がありました。
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 では、これらの特約をどのように使った方が良いでしょうか。
 使い方としては、以下の3つに分けられると考えております。

1:人身傷害特約を使う。
2:無保険車傷害特約を使う。
3:人身傷害特約と無保険車傷害特約双方を使う。

 今回は 1:、 2:についてまとめさせていただきます。

 
1:人身傷害特約を使う

 ここでは以前に説明した人身傷害特約を先に使ってから裁判で解決する流れで検討していきます。
 本件事故がAさんの任意保険会社の算定基準ですと総額5000万円であったとします。その額から過失分を差し引いた2500万円が、まず人身傷害特約で出ます。その後、弁護士が裁判で決着をつけても、Bさんは無保険、無一文であるいから、仮に裁判所の基準で総額が1億円であったとして、過失分を差し引いた5000万円を請求できたとしても、金銭の回収は出来ません。
 この場合、2500万円を回収して終わりそうです。
 ただ、支払限度額が5000万円であり、2500万円については上記5000万円の請求権が認められたことを盾にAさんの任意保険会社に交渉する余地があります。何故なら、以前に説明しました通り、約款で裁判所の算出額を尊重する旨が記載されていることがあるからです。
よって、ここでの金額は5000万円とします。

2:無保険車傷害特約を使う

 この場合でも、本件事故がAさんの任意保険会社の算定基準で総額5000万円であったとします。過失分を差し引いた2500万円が、無保険車傷害特約で出ます。そしてBさんは無保険、無一文であり、裁判所の基準で総額1億円、過失分を差し引いた5000万円を請求しても、金銭の回収は出来ません。

 但し、懇意にしている弁護士によりますと、全額を回収できる方法もあるとのことです。
 手続きの流れは簡単に言いますと、以下の通りです。

① 後遺症(後遺障害)の認定。

② 加害者(Bさん)に損害賠償請求訴訟を起こし、確定判決を得る。
 この場合、加害者が裁判を欠席したら、判決が公示されて終わります。

③ 確定判決書を添えて自身の任意保険会社に保険請求をする。

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 以上の流れでは、保険会社は自社基準額でしか支払わないと主張するはずです。
 そこで、仮に保険会社がそのように主張してきた場合、裁判で勝負する旨、金融庁に相談する旨、を主張します。
 保険会社は、裁判で争った場合、その結果算出された金額を支払額にする旨を約款上記載されていること(仮に記載されていなくても、その額を尊重する傾向にあること)、自分の保険会社の基準以上の金額では認められないという内容の判例が出るのを極端に嫌うこと、時間が多くかかり、経営上早期解決を望むことから、裁判所の基準での金額で支払う可能性が出てきます。

 本件では、5000万円を③で回収します。

 以上から、 1:では5000万円、 2:でも5000万円を回収できますので、結論としては変化がありません。