もう一つの本音にも触れておきましょう。
成功報酬の請求の局面において、事前認定の場合、賠償総額がまとまって報酬が計算しやすくなります。示談前に自賠責保険を受け取ると、賠償総額が減ってしまい、その分の報酬を取ることに議論が生じます。特に弁護士費用特約を請求する際、弁特社(保険会社)から理解を得ずらい、面倒な議論なのです。
<被害者請求の憂鬱>
「被害者請求は無駄だからやらない」だけの理由ながら、(被害者請求を希望する)依頼者を必死に説得している事務所があり、この弁護士の意図が謎でした。看板(HP)の通り、等級認定からしっかり取り組んでいるのなら、おのずと診断書や検査データが手元に集まるはずです。行きがけの駄賃ではないですが、そのまま被害者請求としてもよいような気がします。
これについてある弁護士先生から裏事情を聞き、うなずけました。流れで説明します。
まず、相手保険会社に事前認定で等級を確定させます。続いて賠償金の請求書を突きつけます。その計算は、まだ自賠責保険金を受け取っていないので、自賠分を含んだ請求書が作れます。結果として獲得額が増大、報酬を高額にできるという仕組みです。
さらに、後に弁護士費用特約を請求する際、報酬計算上、自賠責保険金分の控除を防ぐ効果もあります。もし、被害者請求等で先に自賠責保険を確保したら・・弁特社から「被害者請求は弁護士が医師から診断書を預かり、自賠に提出するだけですよね、だから自賠責保険金分は獲得した賠償金から引いて下さいよ」と言われ易くなります。
もっとも、被害者請求のプロセスでしっかりとした立証作業を行っている弁護士は自信を持って、「自賠責の等級認定においても被害者請求を選択、これこれの作業を行いました。これも獲得した賠償金の一部です」と弁特社に力強く主張、理解を得ています。ところが、「事前認定も被害者請求も同じ」と被害者請求の効果を否定している先生は・・このような抗弁が出来なくなってしまうのです。
報酬が被害者請求のおかげで減ってしまう? やはり、「依頼者のため」だけとは言い切れない、商売上の事情が存在するようです。
さて、昨日に続き、双方の本音を垣間見ました。このような裏事情が「事前認定か被害者請求か?」の議論を障害立証という本質から遠ざけ、形式論としてしまったのです。
当然ですが、被害者にとってそのような業者の事情は関係ありません。改めて事前認定、被害者請求、どちらを選ぶのか? やはり、本質(医療調査を徹底した、障害の立証作業が本来の目的)に立ち返って考える必要があります。