昨日の病院同行で痛感させられました。交通事故外傷は奥が深い、ということです。
被害者は事故後、肩周辺の筋萎縮と左腕の挙上不能(腕が上がらない)が続き、改善が見られません。これは頚部神経症状なのか、それとも肩腱板損傷なのか・・・画像所見も判然としません。そこで専門医の診断を仰ぎました。
受傷後の頚部MRI読影、そして徒手筋力テスト、神経症状の問診が流れるように進みます。そして下った診断名が頚椎性筋力低下を伴った「脊髄前角障害」です。脊髄のMRI・T2画像に点状の高輝度所見がみられます。私も見落としていました。ヘルニアの圧迫や脊柱管・神経孔の狭窄にこだわっていたからです。そして肩のMRIばかり凝視して腱板損傷を探していました。
結果としてこの患者は「前方固定手術」とよばれる頚椎の手術で改善が図れるかもしれない、という道筋が立ちました。
教訓です、教科書通りではダメなんです。やはり経験を積んだ専門医の診断の前には生兵法甚だしい結果となります。
改善が見られない、診断名がはっきりしない、などの場合があります。このままでは治療方針が定まらず、有効な治療も行われず、患者の回復の助けにはなりません。後遺障害の立証の過程で、それらを見極め確実な診断と適切な治療に結びつけることも重要な仕事です。
頚椎症を二分する脊髄圧迫型と神経根圧迫型、
しかしそれだけではないことを学習しました。