原発事故で被害を受けた被害者の皆さんは怒り心頭で東電側弁護士の反証を聞いたことでしょう。では、法律以前の非常識論理が交渉材料となり、加害者側に有利に働くのでしょうか?かえって被害者の態度を硬化させ交渉が長引き、訴訟上では裁判官の心証すら害する・・つまり、逆に加害者側に不利に働くことはないのでしょうか?法律家ではないど素人の私はそう心配してしまうのです。
これは交通事故でもよく聞く話です。それでは、加害者側(保険会社の)弁護士の「とんでも反証・交通事故編」を紹介します。全部実話です。
〇 片目を失明した被害者の損害賠償請求に対し、相手弁護士は・・
とんでも反証
「片目が残っているから大丈夫、ちゃんと見えるので逸失利益はない」
これに対し、被害者は「じゃ、今から(その弁護士の)片目を潰してやる!」と当然に激怒、裁判官もこの反証は一切取り上げず、怒気を示したそうです。
ハムラビ法典がしっくりきますね。
〇 横断歩道上の歩行者をスピード超過(およそ60km)の自動車ではねた加害者の弁護士は・・
とんでも反証
「自動車が来たらよけるべき、したがって歩行者に過失20%ある」
この弁護士は70代の高齢者である被害者にアスリートを超越した運動神経を要求しています。
刑事裁判でもこの加害者は「被害者は後ろ歩きで横断していた」などと供述しました。被害者はマイケル・ジャクソンのようにムーンウォークで横断したようです。結果は、裁判官「そんなわけないでしょ!」と激怒。民事裁判と同じ弁護士でしたがこれを言わせちゃまずいでしょ。
〇 高次脳機能障害(5級)を負った被害者に対し・・
とんでも反証
「被害者の学歴は高校中退なので、元々知能が低い。認知・記憶障害は脳障害が影響したわけではない」
つまり、被害者は高校中退の単なるバカボン、障害は天然、という主張です。確かに障害者の学習歴は検証に値しますが、学力と関係のない、専門医が認めた脳障害について全否定はひどいです。(ちなみに中退の理由はケンカで同級生をぶっ飛ばしたから)
法廷で被害者家族はあっけにとられ・・当然、裁判官もこの主張には触れもしませんでした。
これらの例に共通するのは、自然科学的な反証が成されていないこと、被害者の心情と裁判官の心象を悪化させていることです。仮に私が加害者だったらこのような弁護士は雇いません。
交通事故では被害者側が加害者(側の保険会社)に証拠を突きつけて損害賠償することになります。これを「挙証責任は原告にあり」と言うそうです。被害者(側の弁護士)は自らの損害を立証することで大変な苦労を強いられます。提出する証拠は常に科学的・論理的でなければなりません。対して、賠償金(保険金)を支払う側の弁護士は楽なものです。とりあえず「払えません」「証拠を出して」とだけ言えば済むのです。
加害者側(保険会社からの依頼)で活躍している弁護士先生も何人か知っております。大会社である保険会社を守る仕事となります。緻密な立証作業で鍛えられる被害者側弁護士に比して、支払い側で胡坐をかき、稚拙な反証を繰り返すばかり・・これでは弁護士としての腕は上がらないと思います(これは余計なお世話ですね)。
資本主義社会では支払い側は常に強いものです。被害者側弁護士はドンキホーテなのです(私はロシナンテの役?)。
請求側(被害者側)は弱者です。やはり弱者の味方はかっこいいと思います。しかし強者と言えども権利は公平、味方が必要でしょう。ただし、とんでも反証だけは止めてもらえないでしょうか。反論は科学的根拠に基づいた理論で、そして、常識と道徳を前提としてもらいたいのです。とんでも反証で皆、無駄に疲れてしまいます。