自賠責の共同不法行為に関する質問です。最近はネットのみならず、治療先からもにわか知識のアドバイスで振り回される被害者が多いようです。本件はその一例です。(内容は一部脚色しています)
Q) 後方からの追突された事故で、被害車両に同乗していました。首の痛みから接骨院で半年以上、施術を続けています。接骨院の先生から、「後方から追突してきた車両だけではなく、同乗していた車両の自賠責保険も使えるかもしれない。現在、施術料は200万円ほどですが、自賠責が2枠使えれば限度額120万円の2倍=240万円まで大丈夫ですよ!」と聞きました。この先生は先日、施術料を相手保険会社からの打切りされてしまったのですが、自賠責に請求すれば大丈夫と言っています。本当に240万円まで請求できるのでしょうか?
A) 順番に整理しましょう
1、被害車両の同乗者は双方の自動車による被害者で、双方の自動車に過失がある事故であれば共同不法行為が成立します。したがって、先生の言うように傷害支払い限度額120万円×2=240万円の支払い枠を確保できます。
2、本件の場合、被追突で明らかな0:100であれば、同乗自動車の運転手にはまったく責任がないことになります。被害者救済志向が強い自賠責保険でもさすがに過失0の相手には請求できません。
3、仮に同乗車に責任が5%でもあれば有責(ただし傷害支払いは20%減額)となります。その場合、96万円+120万円=216万円の支払い枠が確保できます。
4、検討の余地のない0:100であれば、共同不法行為とならず、自賠責の支払い枠は加害車両の120万円のみとなります。
5、結局、自賠責に請求するメリットはなく、相手の任意保険会社へ交渉・請求すること以上の成果は得られません。
本件の相談から、接骨院・整骨院が「いかに保険会社から施術料を確保するか」に苦心している様子が伝わります。保険会社の横暴な払い渋りは困りますが、いざ施術料明細書を見ると、病院の倍近く、異常な高額請求だったりします。一概に保険会社を責められないような気もしますが・・。