シリーズ中、鎖骨の脱臼の程度を表す「Grade」が出てきます。まずは、以下の表でおさらいしましょう。

 肩鎖関節の脱臼は3段階(さらにひどい状態を含めた6段階もある)に分けられます。これをtossy分類とよびます。経験ではGradeⅡ以上のほとんどに外見上の変形が残ります。

 Grade Ⅰ  靱帯の軽度の損傷のみで捻挫と同様、明らかな脱臼はない。
 Grade Ⅱ  肩鎖靱帯の損傷があり、亜脱臼位 を呈する。
 Grade Ⅲ  肩鎖靱帯損傷に烏口鎖骨靱帯の損傷が加わり、完全脱臼位を呈する。

 
【事案】

自転車で走行中、左路側帯に駐車中の自動車が急発進し、右転回したために前方をふさがれて衝突。肩から路面に落ちた。GradeⅡ型の亜脱臼となり、クラビクルバンドで固定した。
 
【問題点】

主治医は「靭帯が固まればもうやることはない」「少し変形するのは仕方ない」と治療を終了した。しかし、痛みは激しく、肩の可動域制限もあったので、ある行政書士に相談したところ、(提携している?)接骨院を紹介された。しかし、ここでは後遺障害診断書が書けないので、結局、また病院に戻った。ところが「最初から見ていないので診断書を書けない」との対応。このように迷走した状態で相談会に参加された。
 
【立証ポイント】

肩鎖関節の治療に実績のある病院にお連れし、疼痛の緩和と肩関節可動域の回復を目標に治療を継続させた。痛みどめの注射と運動療法の効果はあったものの、やはり変形(ピアノキーサイン)だけは残った。しかるべき時期に症状固定、ROM計測と写真撮影を行い、12級5号を確保。

疼痛緩和や可動域回復について、接骨院に効果があることは承知している。しかし、急性期から症状固定までしっかりリハビリを行う整形外科も存在する。そして診断書は病院でしか書けない。被害者は良く考えて治療先を選ぶべきだろう。
 
 このシリーズは最後に鎖骨の後遺障害一覧表を見て復習して下さい。