交通事故による人身被害件数は年々減っていますが、自転車による加害事故はやや増加しています。相談会でもよく相談が寄せられます。相手が自転車の場合、相手に個人賠償責任保険の加入があるかが一番のポイントと思っています。今日は基本事項についておさらいしましょう。
〇 個人賠償責任保険とは、個人が日常生活で他人(第三者)に対してケガをさせたり、モノを壊してしまったりした場合に損害賠償責任が生じた際に適用される保険です。賠償金の交渉については、保険会社による示談代行付きの保険が一般的となりました。
(例)
・ベランダで植木鉢を落として通行人に激突させてしまった場合。
・買い物途中に、誤って商品を落として破壊してしまった場合。
・子どもが遊んでいて誤って友達をケガさせた場合。
・ペットが通行人にケガをさせた場合。
・アパートの水漏れ事故で階下の部屋に損害を与えた場合。
・自転車走行中、人や自転車・自動車に衝突してケガ、損害を与えた場合 等々
★ あくまで、日常生活での事故を対象としているものですので、業務中の事故等は対象外で、例えば、自転車による加害事故でも蕎麦屋の出前中の事故は施設賠償保険の適用とされます。
〇 個人賠償責任保険は、通常、他の保険の特約となっています。
何故なら、単体での販売であると、保険会社が元を取れず採算が合わなくなるからです。掛金は最高1000万円の補償でも年間1200円程度なのです。
ご自身の火災保険、自動車保険、傷害保険等の特約の有無をチェックして下さい。尚、個人賠償責任保険特約付きの自動車保険を解約すると、自動車保険と同時に、個人賠償責任保険もなくなることになります。解約の際には注意が必要です。
〇 この保険の(一般的な)対象者は、単純に言うと、契約者本人とその家族です。
家族の例として、契約者の夫や妻、子、その他の同居している親族(三世代で住んでいる祖父祖母等)、生計を一つにする別居の未婚の子 ※(仕送りを受けて一人暮らし中の学生さん等)、等々があげられます。このことから、家族の一人が加入するだけで、そのほかの家族も大体カバーできてしまうことが多いのです。
したがって、家族中の保険に特約として加入されていないか探す必要があります。見落としがちなのは年会費を伴うようなクレジットカードです。これにもひっそり1000万程度が加入されているケースがあります。
※ 別居の未婚の子・・・この別居の未婚の子とは、通学のために別居に下宿している子などが代表例です。しかし、学生に限らず、独身の40歳OL一人暮らしも範囲に入ります。このOLさんが東京で交通事故でケガをして、なんと!九州の実家の親の保険が使えるケースが有り得るのです。
「別居の未婚の子」に年齢制限はありません。婚姻歴無のみが条件です。一度結婚し、離婚して独身になってもダメです。ですので18歳で結婚し、19歳で離婚バツ1となった人は、未成年であっても「別居の未婚の子」から外れます。なんか腑に落ちませんが、保険約款が民法の「成年擬制」の条項に準じているためと思われます。
<民法第753条>
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
民法上、未成年でも婚姻すれば成年と同じように行為能力者とみなします。男子の場合18歳、女子の場合16歳になると婚姻をする事ができますが、婚姻によっても成年に達したものとみなされます。これによって親権者の同意を得ずに単独で法律行為が可能になります。この効果は離婚しても消滅しません。つまり、法律上20歳で大人ですが、未成年でも1度結婚したら大人と扱う、ということです。