もう少し、下肢の実績を続けましょう。今度は重症例です。
実は重傷なほど後遺障害の立証は易しくなります。それは手術を通じて、一通りの画像検査が実施されているからです。
一方、手術にはリスクがつきもので、患者はそのリスクと効果を比較検討することになります。この部分でメディカルコーディネーターも一緒に考えます。結果として完全治癒すれば問題ありません。しかし、治療手段は必ずしも一つではなく、万全ではありません。何を犠牲にしてどこを治すか?、このような決断が必要な時があります。
【事案】
バイクで直進中、T字路で対向自動車が急に右折、衝突したもの。初期診断名は左足関節脱臼骨折、左脛骨天蓋骨折、右橈骨遠位端骨折、モンテジア骨折、外傷性肝損傷、腹腔内出血、びまん性脳損傷(脳の障害はなし)・・以上、左脚と右腕に障害必至の重傷である。
【問題点】
足関節の治療が最も困難を極めた。足関節内顆と外顆にインプラントを埋め込み、スクリュー固定する。その後、可動域確保のために関節鏡下手術で滑膜切除を行う。しかし整復後も足関節の激痛収まらず、体重を支えられない。主治医は最後の手段として、腓骨から骨採取し、足関節の固定術を施行。この固定術によって足関節の可動域は永遠に失わることになった。被害者は可動域を犠牲にする選択をしたのである。
【立証ポイント】
手術を数度、伴ったおかげでCR、CT、MRIすべて画像検査が揃っていた。足関節は完全固定の為、5°の可動が限界で用廃決定。残るは腓骨の採取(変形)で12級、開放創と手術痕による醜状痕を写真撮影して14級を計算、以上を漏らさず後遺障害診断書に記載いただいた。8級に併合を加えて7級とするためである。
本件は病院同行を通して、局面に応じて被害者にとって最適な選択となるように相談を重ね、見守り続ける作業となった。