続いて、可動域制限の理由を追求・立証した好取組を。
本例で言えることは、障害を診断する医師の視点と障害を審査・認定する審査側の視点は一致していないということです。医師は直接、患者を診ていますので、「曲がらなくなった」ことを実際に触診して確認しています。もしそれが演技ならば見抜きます。しかし審査側は書面審査が原則です。「曲がらなくなった」ことが頷けるような受傷時の骨折形態と、症状固定時期の癒合状態を画像で確認します。癒合不良、変形、転位、関節面の不正等から可動域制限の有無を判断しているのです。したがって、医師にとってわかりきっていることであっても、審査側に「曲がらなくなった」理由・原因を画像検査とその診断内容にて丁寧に示さねばならないのです。
【事案】
自動車で信号待ち停車中、後続車に追突された。強い衝撃で前車に玉突き衝突、前後の自動車に挟まれた状態で救護された。ダッシュボード下に伸ばした下肢に縦方向に衝撃を受け、右の脛の真ん中部分(脛骨骨幹部)を骨折した。
【問題点】
本件で被害者が訴える症状はすねの骨折によって足首の曲がりが悪くなってしまったことである。医師は受傷機転、骨折状態から足関節への影響を認めている。しかし本事故で足関節部に直接の損傷はなく、診断名もない。足関節の可動域制限の理由が見出せないのである。自賠責に可動域制限を否定される危惧を抱いた。
【立証ポイント】
脛骨の骨折により足関節の関節裂隙に狭小化があるのでは?この仮説のもと、左右下肢を揃えてXP撮影をすることを主治医に進言した。しかし主治医は「ケガをしていない脚も撮るの?」と拒否の姿勢だった。そこで「左右の関節裂隙の比較が足関節可動域制限立証の勝負どころである」と熱心に説明し、検査の意味・必要性について理解を得る事ができた。
そのXP画像は・・・脛骨の癒合は良好であるが、左右を比べるとケガをした方の足関節にわずかな狭小化が確認できた。
結果として12級7号を確保、足関節の可動域制限は立証された。このように医師の理解・協力を引き出せば間違い(の認定結果)は起きない。メディカルコーディネーターの面目躍如といったところ。