<Bパターン>
中居さんの説明を聞いても「断じて保険は使わない」「草薙さんと示談しない」「念書も交わさない」と稲垣さんがすべて拒んだら・・・駄々っ子のように手に負えません。もう裁判か調停するしかありません。草薙さんから委任を受けた香取弁護士は最後まで責任を全うします。つまり訴訟に進めました。
この場合、修理費30万の請求ですので、手続きが簡単で即日判決、便利な「少額訴訟」を行います。
少額訴訟について (裁判所のパンフレットから抜粋)
• 1回の期日で審理を終えて判決をすることを原則とする,特別な訴訟手続です。
• 60万円以下の金銭の支払を求める場合に限り,利用することができます。
• 原告の言い分が認められる場合でも,分割払,支払猶予,遅延損害金免除の判決がされることがあります。
• 訴訟の途中で話合いにより解決することもできます(これを「和解」といいます。)。
• 判決書又は和解の内容が記載された和解調書に基づき,強制執行を申し立てることができます(少額訴訟の判決や和解調書等については,判決等をした簡易裁判所においても金銭債権(給料,預金等)に対する強制執行(少額訴訟債権執行)を申し立てることができます。)。
• 少額訴訟判決に対する不服申立ては,異議の申立てに限られます(控訴はできません。)。
民事訴訟のうち,60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて,原則として1回の審理で紛争解決を図る手続です。即時解決を目指すため,証拠書類や証人は,審理の日にその場ですぐに調べることができるものに限られます。法廷では,基本的には,裁判官と共に丸いテーブル(ラウンドテーブル)に着席する形式で,審理が進められます。
香取先生はこの制度を利用、即日、判決書をゲットしました。ちなみに稲垣さんは欠席しました。
続いて香取先生はその判決書を東京ダイレクト損保 中居氏に提出し、あらためて「直接請求権」を行使しました。約款上、中居さんは速やかに判決書通りの金額を支払いました。このように直接請求権のおかげで回収が確保されたのです。裁判に勝っても相手が逃げて行方をくらまし、さらに強制執行をかける財産がなければ、結局、取りっぱぐれとなってしまいます。
最後まで稲垣さんは逃げ続けましたが、こうして稲垣さんの意思に関わらず保険は使用され、来年の掛金はUPしました。ちなみに東京ダイレクト損保にとっても面倒な契約者となった稲垣さん、来年の更新は稲垣さんが拒む以前に東京ダイレクトから更新謝絶と予想します。
最後に
問題の本質は「来年の掛金が上がるから保険を使いたくない」身勝手な加害者の存在です。昨年秋からの改定でノンフリート等級(無事故割引)が変更され、デメリット等級(前年事故の等級)の掛金が半端なく上がるようになりました。したがって今シリーズのような事例は多くなるかもしれません。
「直接請求権」、被害者はもちろん、交通事故に関わる業者は知らなければならない約款条項です。