代理店さんの契約者さんが事故で脚を骨折しました。半年後、骨の癒合は良いものの、わずかに膝の曲がりが悪く、痛みが残っています。リハビリを続けても改善が進みませんし、相手の保険会社も治療の打切りを迫ってきます。そこでSC(保険会社の支払い係)から後遺障害診断書を預かり、医師に記載していただくよう契約者さんに渡しました。

 ところが後日、契約者さんは途方に暮れて帰ってきました。医師に依頼したところ、「骨の癒合は問題ないので後遺症はない。無駄だから書かない」とのことです。

 その後、再三にわたり頼んで、ようやく解読不能の達筆で一行だけが記載された診断書が返ってきました。
 
 
(質問)
 代理店さん:「後遺障害診断書を書いて」と依頼しても医師が書いてくれない、また書いてくれたとしてもかなりいい加減で困っています。どうしたらよいでしょうか?

 

(回答)
 秋葉:代理店さんが病院へ同行して下さい。通常、患者は医師の言いなりとなります。そこで患者の代わりに医師に事情を上手に伝える必要があります。代理店さんの交渉力が発揮される場です。ここで顧客様を助けて差し上げれば、信頼は絶大です。

coordninate

 
(解説)
 医師の仕事は当然ですがケガを治すことです。後遺障害とは「治らなかった」ことであり、その診断書は「治せなかった」証明書です。医師は日々患者の治療で多忙を極めています。このような書類仕事はやりたくない仕事のNo.1です。まして自身の治療努力が叶わなかったことを書かねばならないのです。

 やはり、簡単に、自動的に、間違いなく、仕上がる書類ではないのです。孤立無援の被害者には誰かの助けが必要なのです。しかし、仮に代理店さんや弁護士、メディカルコーディネーターが診断書の依頼に奔走したとしても、保険会社は冷ややかです。建前上、医師が記載の判断をする、さらに医師が書くものに間違いはない、との認識を示します。これが先日のシリーズ「弁護士費用特約にまつわるエトセトラ⑥」につながります。
 
 現場の代理店さんが嘆くように、後遺障害診断書の正確な記載とは、本来全件そうあるべきであるのに関わらず、多くが不記載・不正確・不十分の三重苦となる傾向です。これが現実です。世の中、正しいことが必ずしも行われていないものです。そして、この書類で被害者の運命は大きく左右されてしまうのです。
20060502