ある日追突事故に遭い、ひどいむち打ちとなりました。リハビリを続けていますが、痛みは徐々に治まってきたもの、首から肩にかけて重だるさが抜けず、時折、指先までしびれが走ります。めまいや頭痛もあり、夜も寝られないことがあります。
病院ではレントゲンで「骨に異常はないです」と言われたっきり、痛みどめの薬と湿布しかもらえません。「捻挫だからね」と医師も関心ないようです。そしてこのまま3か月が経ちます。加害者からは何の謝罪もなく、加害者の保険会社からは「そろそろ治療を終わりにしてくれませんか」と毎週のように電話がかかってくるようになりました。言葉もだんだん冷たくなってきて、まるで詐病者、保険金サギのような扱いです。仕事も手につかず、休みがちなせいか職場の空気も気まずく、家庭でもうんざりされて・・・。
こんな環境では治りません。
むち打ちの多くは捻挫の類であり、通常、腫れがひけば治るものです。しかしそれを契機に頚部神経症状を起こす方がいます。こうなると半年から数年、手指のしびれを代表とした不調が続くことになります。では治るまで相手の保険会社が治療費を払ってくれるのか? 答えは「否」です。
打撲や捻挫で通院期間が半年も数年もかかるのは医学的な常識から外れます。であれば、頚部に神経症状が起きたことをなるべく早々に立証し、受傷から6か月程度までしっかり整形外科でリハビリを続けることです。そして保険会社に急かされるまでもなく、症状固定し、後遺障害14級9号の認定を受けます。
14級の認定を受ければ、主婦でもその後の交渉で賠償金が300万円程度に膨らみます。治療費の支払延長で保険会社とやり合いうより、まとまった一時金を手にして、後は健康保険で整骨院でも鍼灸院でも、温泉や整体や祈祷でも好きな治療を続ければいいのです。治療費を相手に出させている事はつまり、治療内容が限定され、常に「治療費打ち切り」される立場なのです。
むち打ちで症状が長引く被害者の中で、経験上もっとも症状が軽快したのは、このように半年~9か月目で解決させてハワイ旅行に行った方です。
温暖でさわやかな常夏の気候、青い海、フレッシュなシーフード、事故の苦痛を忘れさせてくれます。すると人間の体に内包する自己治癒作用が活発になり、症状がどんどん改善されていきます。真面目に半年リハビリしてても良くならなかった痛み、しびれが嘘のように軽減してきます。そしてなにより事故から派生する対病院、対加害者、対保険会社、その他諸々のストレスから解放させてくれるのが賠償金とハワイなのです。「病は気から」と言うわけではありませんが、疼痛や神経症状は受傷した部位ではなく、脳が深く関与しているとの学説もあります。
「ハワイに行けば治る!」、立場上、不謹慎な物言いですが、むち打ち相談が多かった昨日、一昨日の相談会でも思わず口にしてしまいました。(「ハワイに行けば治る」と真面目にメモしていた新人弁護士先生(笑)、これはメモしなくていいよ) しかしケガの苦痛、事故のストレスを抱えて相談にいらした被害者さんは先行きが見えない闇の中です。対して「しっかりリハビリをして、早く解決させて、そしてハワイ」と目標を持たせることにより、目の前がぱっと開けるのです。目標はハワイとは限りません。趣味やレジャーなどできるだけ良いイメージを示すことです。何事も目標のない、行き先の見えない戦いを続ける事は辛すぎるのです。
医者でもない私たちが出来る事、それは相手から保険金や賠償金を取ることに他なりません。しかしそれは被害者に対して解決の道筋を示し、目標をたてて差し上げることになり、ネガティブな感情を前向きにさせる事につながります。相談会はそのようなケアができる場でもあると思います。