懐かしい骨折名です。大学の剣道部で同期の部員が2度経験しています。激しい稽古で消耗すると、自然に足の甲の小指側の骨が折れてしまいます。多くは時間をたてば自然に癒合しますが、怖いのは無感覚の偽関節、または骨折癖、つまり簡単に何度も折れてしまうことです。

 交通事故外傷では一度経験していますが、やはり癒合状態もよく、特に痛みも残らないので後遺障害の対象とはなりませんでした。もし偽関節(くっつかなかった)となっても普通に歩けるようです。しかし症状固定時に偽関節化していれば、当然、後遺障害として申請すべきです。

 今日はいつも骨モデルを購入しているトワテックさんからのメール(メディカルリポート)から抜粋しました。ちなみにスミスやジョーンズなど名前のついた骨折名があります。多くは学会で症例と治療法を発表した医師の名前がついているようです。

               

 Jones骨折とはJonesが自らの経験を基に最初に報告した骨折で、第5中足骨の骨幹近位部に繰り返し加わる外力により生じる疲労骨折の1つです。同じ部位に繰り返し弱い力が加わることによって起こる疲労骨折は、運動しているときに痛み、安静にしている時には痛みは治まります。骨折線の特徴として横走するものが多く見られます。 また再発を繰り返し治療に難渋する事が多く遷延治癒や偽関節になりやすいためスポーツ選手(特にサッカー選手)の場合は、選手生命を左右することが多い疾患と言われています。解剖学的に第5中足骨の基部は短腓骨筋腱・第4中足骨と連結している底側中足間靭帯・立方骨と連結している底側足根靭帯がついており強く固定されています。それにより基部は固定され基部中枢から末梢1.5cmの弱い部分に力が繰り返し集中し発生、骨折線も横走するものが多いのです。
 症状として初めのうちは違和感程度で、これといって症状はありません。徐々に時間とともに負荷が加わり、疲労骨折の症状として運動しているときは痛み、安静にしているときは治ったりと増悪や緩解を繰り返します。完全骨折になると激痛で歩行困難となります。鑑別診断として、短腓骨筋の急激な収縮により起こる下駄骨折や残存性骨軟骨障害などが挙げられます。

 治療としては、不全骨折の場合は保存療法を選択します。繰り返し同部位に力が加わるため足圧分散の足挿板を使用したり、足底筋や腓骨筋など筋力バランスの強化。または姿勢反射調整などがあげられます。観血的療法に踏み込む場合は、完全骨折の場合など症状に応じて判断していきます。どちらにしても疲労骨折の1つであるJones骨折の治療の目的として、骨の癒合だけにとらわれず、持続的に同部位への繰り返しによる応力の集中を防ぎ、再発に努めることも大切です。

整形外科医 北村 大也 先生