前回の行政処分から間が空きました。続く罰金ですが、曖昧な解釈の方が多いようです。交通事故における罰金と言っても、交通反則金と罰金があります。この二つは法的性質が異なり、交通反則金は罰金とは別物です。まずこれを整理します。

 交通違反(ここでは軽微な人身事故を含む)に対し、一律に刑事手続きを行っていますと検察庁、裁判所はパンクします。なんといっても違反者の数が交通事故は桁違いです。そしてすべてに刑事処分を適用すれば、国民のほとんどが前科者になってしまいます。したがって交通違反の爆発的な増加に伴い昭和43年、交通チケット制度(俗に青切符)ができました。軽微な違反に対し、一定の金額を収めれば、刑事処分を免除しようとするものです。
 この反則金は罰金ではなく、行政庁が課す一種の制裁金であり、分類も「行政処分」の一つとされています。しかし納付しなければ刑事処分に進みますので、厳密に言えば反則金は行政処分と刑事処分の中間に位置するものとも言えます。

 人身事故の場合、原則直ちに、刑事処分に進みます。したがって交通反則金(青切符)は無関係となります。しかし行政処分としての免許の違反点数、停止、取り消しは重ねて科されます。この辺がもっとも「★よくある間違い」なのです。

 罰金を中心に交通事故の刑罰を以下の表にまとめました。しかし軽傷(全治2週間以下)や物損事故はほとんどが不起訴となり、罰金が科されるケースは少ないものです。

 交通事故の刑罰 相場表

責任の重さ

ケガの重さ

刑事処分

故意、飲酒、悪質、
重大な過失

死亡
※危険運転致死罪が適用された場合

懲役刑 1年~20年

過失によるもの 死亡 懲役刑もしくは禁固刑 7年以下
罰金刑 ~100万円
故意、飲酒、悪質、
重大な過失
傷害
※危険運転致傷罪が適用された場合
懲役刑 15年以下
専らの原因で 治療期間3か月以上の重傷事故
特定の後遺障害が伴う事故
懲役刑・禁固刑及び
罰金刑 50万円
治療期間30日以上3か月未満の重傷事故 罰金刑 30~50万円
治療期間15日以上30日未満の軽傷事故 罰金刑 20~50万円
治療期間15日未満の軽傷事故 罰金刑 20~30万円
建造物損壊に係る事故
専ら以外の原因で 治療期間15日以上30日未満の軽傷事故 罰金刑 15~20万円
治療期間15日未満の軽傷事故 罰金刑 12~15万円
建造物損壊に係る事故

 
 これはあくまで参考金額で加害者・被害者の過失割合、ひき逃げ、酒飲み、無免許などの悪質性が加味されて判断されます。また、被害者側の処罰感情の有無により、つまり被害者が「寛大な処分を」と言えば大幅な軽減要素になります。
 
 近年、新設・改正された「危険運転致死罪」でより重い処分も追加されました。表の通り、責任の重さによって「自動車運転過失致死傷罪」と「※危険運転致死傷罪」で2分します。