交通事故を起こすと加害者に3つの責任が科されます。

1、 行政処分 2、 刑事罰 3、 民事賠償

普段、交通事故の解決と言えば3の民事賠償が中心の話題となります。しかし事故相談において加害者側の相談も少なくありません。加害者には被害者への賠償以外にも2つのペナルティがあります。いわゆる免許点数の減点や反則金、罰金のことです。これらを混同している方も多いので、1の行政処分と2の刑事罰について、できるだけ簡便に説明しておきます。

1、行政処分

行政処分は免許の点数制度に減点が加えられること、程度によって反則金が課されることです。交通事故の場合、計算は以下のようになります。

基礎点数 + 付加点数 + 措置義務違反の加算 = 合計点数

基礎点数とは駐車違反やスピード違反など、安全運転を怠った場合の減点です。事故の場合これに付加点数が課されます。ひき逃げ、当て逃げには措置義務違反点数がさらに加算されます。

<計算例>
交差点で信号無視の自動車が横断中の自転車を跳ね、逃走。後日、目撃証言から加害者は捕まりました。被害者は脛骨骨折で全治1か月です。

信号無視2点 + 全治1か月&専らの責任 9点 + 救護措置違反23点 = 34点

2年間免許取り消しとなります。

付加点数について以下の表にて整理しました。

交通事故での付加点数

建造物損壊に係る交通事故 ※1

専ら以外の原因※2

2

専らの原因※2

3


治療期間15日未満の軽傷事故
(
≒全治2週間)

専ら以外の原因

2

専らの原因

3

治療期間15日以上30日未満の
軽傷事故 (≒全治3週間)

専ら以外の原因

4

専らの原因

6

30日以上3月未満の重傷事故
(≒全治1~2か月)

専ら以外の原因

6

専らの原因

9

3月以上の重傷事故、又は特定の後遺障害※3 ?が伴う事故

専ら以外の原因

9

専らの原因

13

死亡事故

専ら以外の原因

13

専らの原因

20

措置義務違反

物損

危険防止等措置違反 = 当て逃げ

5

人身

救護措置等義務違反 = ひき逃げ

23

※1 建造物損壊

 物損事故でも建造物、例として「信号機を壊した」、「店舗に突っ込んだ」等の事故を指します。相手の車やバイク、自転車への損害について減点はありません。

※2 専ら(もっぱら)と専ら以外の区別

「不注意の程度が専ら」とは事故を起こした責任が重大であることを指します。専ら以外とは責任が極めて少ないことを指します。これは警察官の取り調べ(現場検証、当事者双方の供述)で決まります。

※3 特定の後遺障害

おおむね後遺障害13級以上を指します。事故直後ではむち打ちなどの後遺障害の有無はわからないので、明らかな骨折以上のケガで判断されているようです。

★ よくある間違い

Q、交差点で信号待ち停車中、後続車に追突されました。直後から首の痛み、吐き気、めまいがひどく病院へいきました。むち打ちだと思いますが、医師はしばらく(3か月位)通うようにと言いました。しかし警察へ提出するための診断書を書いてもらったら、全治2週間と書いてあります。私は2週間しか通えないのでしょうか?保険金も2週間までなのでしょうか?

A、これは非常によくあるケースです。結論から言うと、初診時の治療期間の見通しは、今後の治療の継続や民事上の争いにまったくと言っていいほど影響しません。「全治〇週間」は相手の点数や反則金を決めるだけの記述に留まります。

 医師の初期診断は明らかな重症、入院などを除き、なぜか「全治2週間」か「全治3週間」に二分します。そして圧倒的に2週間が多い。医師に質問したところ、あくまで見込の期間なので少なめに書くそうです。表を見ますと、一発免停(6点以上)か否(5点以下)かがこの1週間の差にかかっています。事故状況や被害者のケガの状況が完全にわからない状態で、重いペナルティを科すと、あとで事実が変わった場合に変更を申し立てられる可能性があります。それを意識してか、警察も2週間以内を奨励している雰囲気があります。警察と医師で申し合わせがある?ような印象を受けます。