今日は弁護士事務所で被害者さんと3者打ち合わせです。暮れに等級が認定されたのですが、今後の賠償交渉をどう進めるかについてです。色々と検討することがありますが、まず被害者さんに今までの相手保険会社さんとの交渉の内容を確認しました。そこで相手の保険会社さんとの最後のやり取りを聞いたところ、その電話の内容がかなりかわいそうでした。紹介します。
保険会社Aさん:「えーっ!・・・・もう頼んじゃったのですか?」
被害者Bさん:「はい」
保険会社Aさん:「そうですか・・・」 (電話でもわかるくらいしょんぼり)
さて、このやり取りの背景を解説しましょう。① まず被害者請求ですが・・・今回のケースは加害者に任意保険会社がついており、被害者Bさんと交渉してきました。しかし任意会社が最後まで賠償の対応をしてくれるにも関わらず、被害者Bさんは相手の自賠責保険に後遺障害分を直接請求したのです。この請求の審査の間、任意保険会社は被害者と賠償交渉はできず、後遺障害の認定及び、保険金支払いまで待たねばなりません。
90%以上の被害者が被害者請求ではなく、相手保険会社に等級申請を任す「事前認定」です。これですと認定された保険金は任意保険会社と示談をするまで、被害者の手元には渡らず、あたかも保険会社に握られたままの状態になります。被害者請求のBさんは先に616万円を手にし、余裕綽々です。
② そして保険会社Aさんの想定していた12級ではなく、9級が認定されてしまいました。会社の顧問医の話では12級程度とされていましたので、ちょっとショックです。自賠責調査事務所が認定したので文句も言えません。
③ では今まで被害者Bさんとそれなりに交渉を重ねてきたAさん、なんとかこのまま示談へ進めたいところです。しかし、ここで弁護士を入れてくるとは・・絶句、なのです。
後遺障害保険金も想定していた12級224万円が9級616万に跳ね上がったのです。任意保険基準はこれより少し高くなりますので少なくとも500万くらいUPです。さらにこの任意保険=自社基準は通常、裁判などで判決される額に遠く及ばす、Bさんの9級を赤い本(裁判の参考基準)で計算した額に比べ、2分の1から3分の1ほど低額なのです。したがって弁護士の介入により、担当者Aさんは当初想定した示談額が4倍以上になることを覚悟しなければなりません。
(Aさん)「わわわ・・上司になんて報告しよう・・」
先に400万円くらいで示談できると予想報告でもしてしまったのでしょうか?下手をすれば2000万突破です。
Bさんは最良の解決の道を歩み、担当者Aさんは保険会社にとって最悪の仕事をしてしまいました。
保険会社担当者の絶句、それはつまり、それだけ被害者請求をする被害者はまだ少なく、また弁護士を立てる人も稀で、とどめは裁判の半分以下の任意保険基準で示談してしまう被害者が圧倒的に多いことを表します。
弁護士や私たちの被害者救済ネットワークもまだまだです。夢の「被害者側の事故処理サービスセンター」の構築も始まったばかり、道は遠いですが頑張らねばなりません。