【事案】
自動車走行中、対向車がセンターラインをオーバーし正面衝突、肩鎖関節(鎖骨と肩の間の関節)が亜脱臼する。その後、肩の固定、理学療法を続けるが肩部に鎖骨の外端がわずかにポコッと出っ張ったまま。さらに激痛が数か月もやまない。
【問題点】
完全脱臼した場合は手術が必要だが、亜脱臼も鎖骨の変形が残りやすい。変形は裸体で確認すれば足りるが、本件の最大の問題は、被害者がひどい痛みを受傷半年後も訴えて続けていることです。医師は痛み止め注射の処方を続けるが、痛み自体が後遺障害として評価されるのは困難。「痛み」は「変形」から派生するものとして12級5号の変形に含めてしまうからである。12級を超える障害を立証するのは厳しいと、被害者には過度の期待をもたないよう諌めることからスタートする。
【立証ポイント】
長く続く痛みの原因を探る。3.0テスラMRI検査により、肩に炎症、液体貯留が続いていることを確認する。これにより激しい痛みが半年後も残る外傷性・肩鎖関節炎を立証する。この炎症の継続が肩鎖関節の不接合に加え、肩関節可動域制限の原因と説明する。最後に可動域計測の立合い、外転2分の1以下の制限を確認。続いてMRI検査所見の詳細な記述を医師にお願いする。とどめに自覚症状も別紙で詳細に記述する。こうして障害を徹底的に説明し尽くす。
総合的に症状の重篤度を評価いただき、可動域制限10級10号、鎖骨の変形12級5号、併合9級の認定を得る。
24年は鎖骨の骨折・脱臼絡みの立証が多かった。成功例も重なり、もはや「鎖骨の王様」か。
(平成24年12月)