本日のセミナーの課題は、過失相殺です。かなりベタなテーマですが、Q&A方式に馴染みやすく、参加者の皆様へ8問出題、回答していただきました。    所感としては、思ったより「難しい」。毎度、判例タイムスに合致する事故状況を検索して、過失割合の相場を判断するものですが、何も見ないでの回答は簡単ではありませんでした。次回のセミナーでは、もう少しヒントを盛り込み、答えやすい形に変えようと思います。

 セミナーは回を重ねて熟成させるものです。次回、静岡ではより精度を上げていきたいと思います。参加者の皆様、大変お疲れ様でした。  

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【事案】

自転車で交差点を横断、自動車と出合い頭衝突・・自転車側が完全な赤信号。直ちに救急搬送され、診断名はクモ膜下出血、硬膜下血種、眼窩底骨折、鎖骨骨折など。高次脳機能障害が予想された。    【問題点】

・80%以上の過失が被害者に課せられる事故で、相手損保の一括対応は望めない。まず、健保利用とその手続きに追われた。

・脳外傷起因のせん妄(脳の興奮により、性格が衝動的、攻撃的になる)から、入院先の病院で様々な迷惑行為が生じ、早々に精神科への転院が促された。ご家族としては精神科を避けたいご意向もあり、転院先の選定が急務となった。

・なんとか紹介をつてにリハビリ科への転院を果たした。そこでは、せん妄も落ち着き、1カ月ほど療養を経て退院となった。その後、整形外科、歯科での治療が進み、神経心理学検査を実施後、医師に診断書類の記載をお願いしたが・・その主治医がなかなか記載せず、催促を続けて8カ月後にようやく記載となった。   【立証ポイント】

高次脳機能障害の立証においては、いつもの作業を丁寧に進めるだけであった。問題は、主治医への(診断書記載の)催促で、最終手段として、その院の理事長と副理事長に直訴の手紙を出すに至った。

その後、自賠責保険で無事に等級認定されたが、残る人身傷害保険への請求も簡単ではなかった。休業損害の書類他、追加の診断書、領収書類を集積して提出したが、担当者の提示では、逸失利益が”回復後に就職した先の初任給”で計算されたもので、まったく話にならなかった。その会社へ給与体系を開示していただき、障害がなかった場合の昇給モデルを計算、諸々の書類を添付して、将来の昇給の蓋然性を主張、平均賃金での支払いを求めた申立書を提出、再計算を促した。

結果、逸失利益はおよそ2倍に。弁護士を介して相手と交渉する案件ではなかったが、10か月をかけた人身傷害への請求作業が一番の大仕事となった。   (令和6年3月)  

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