橈骨神経麻痺(とうこつしんけいまひ)
(1)病態
橈骨神経は頚椎から鎖骨の下を走行し、腋の下を通過して、上腕骨の外側をぐるりと回り、外側から前腕の筋肉、伸筋に通じています。橈骨神経は手の甲の皮膚感覚を伝える神経です。橈骨神経の障害が起こる部位は3つあり、腋の下、上腕骨中央部、前腕部です。交通事故では、上腕骨骨幹部骨折、上腕骨顆上骨折、モンテジア骨折等で発症、上腕中央部の麻痺が多いのが特徴です。
症状としては、手の掌は何ともないのに手の甲が痺れます。特に、手の甲の親指・人差し指間が強烈に痺れるのです。手首を反らす筋肉が正常に働かないので、手関節の背屈ができなくなり、親指と人差し指で物をうまく握れなくなり、手は、「下垂手 = drop hand 変形)をきたします。
橈骨神経の支配領域は、親指~薬指の手の甲側なので、この部位の感覚を失います。診断は、上記の症状による診断や、チネル徴候などのテストに加え、針筋電図も有効な検査です。患部を打腱器で叩き、その先の手や足に電気が走ったような痛みを発症するかどうかの神経学的検査法を、Tinel徴候、チネルサインと呼んでいます。