高齢者や障害者、社会的弱者の方が交通事故に遭うと、あらゆる手続きにおいて助力が必要です。ただし、独居者となれば、助けてくれる人は限られます。それが、利害を異にする相手損保さんだった場合、考えるだけも怖いものです。もちろん、良心の元に、立場を超えて、同情的に対応してくれる担当者さんも存在すると思います。でも、本件では、それが幻想であることを痛感しました。
やはり、立証責任は被害者側にあるのです。被害者が自ら動き、障害の証拠を突きつけるしかないのです。しかし、高次脳機能障害の被害者本人にとって、あまりにも荷が重すぎます。幸い、本件は秋葉まで相談が及びました。交通事故の被害者さんは、社会的弱者が多いのです。まだまだ、助けるべき立場の人がいると思います。声が届くよう、頑張るしかありません。 損保担当者さんに悪意はないと信じたい
3級3号:高次脳機能障害(60代男性・静岡県)
【事案】
自転車で退勤途上、交差点で自動車と出合い頭衝突したもの。一早く労災治療となっていた。
診断名は、脳挫傷に加え、左頬骨、骨盤の寛骨臼など骨折した。身体の骨折は順調に癒合が進み、14級程度に回復する見込みである一方、高次脳機能障害は必至の件となった。 【問題点】
自転車側に一時停止があり、相当の過失減額から、賠償請求の余地は低い件であった。また、本件被害者さんは、元々の障害があり、1人暮らしの為、ご職場と遠方のご家族の協力が立証作業の生命線となった。
最大の問題は相手損保であった。治療費が労災であることから、相手損保の積極的な介入はないと思われたが、なんと、3か月で症状固定、後遺障害診断書を病院に記載させてしまった。確かに、ご家族はよくわからないままに同意書を差し出していたが、担当者の考え=「障害者は面倒だから早く終わらせよう」としたのか、単に高次脳機能障害の知識(通常、症状固定は1年後)が無かっただけか、いずれにしても、この担当者からすべて取り上げる必要がある。 【立証ポイント】
必要な検査も欠いたまま、わずか3か月後の後遺障害診断書など、破り捨てるしかない。この時点は、骨折の治療でぐったりしたまま退院したばかり、高次脳機能障害の症状が顕在化する前の状態なのです。しかしながら、そこは、丁重に「書類を補充してお返しします」と言って、相保の担当者に書類一式を返して頂いた。
その後、経過的に症状を観察、案の定、3か月後から情動障害を発露、幻聴や幻覚も加わり、以後、進行していった。ついには介護状態となり、施設入居を余儀なくされた。これこそ、高次脳機能障害の症状、そのクライマックスとなった。いつも通り、可能な検査を的を絞って実施、後遺障害診断書は新たに書き直し、すでに書かれた診断書も遡って修正を加えた。症状と事故前後の変化を職場から精密に聴き取り、9か月後、万全に提出書類を揃えた。