医師はじめ、医療従事者が不正に治療費・施術料を請求している問題ですが、10~5年前に摘発が相次ぎ、その後、鎮静したかに思えました。しかし、コロナ明けの昨年は2件、今年に入ってすでに1件、ご依頼者さんからその情報が聞こえてきました。 病院の不正を目にしたのは、損保時代を含め、この30年間で1件だけでした。しかし、接骨院・整骨院など柔道整復師による不正請求に出くわすのは毎年数件です。その手口は相変わらずで、施術をしていないのに、架空の施術分を健康保険や、交通事故の場合は任意保険や自賠責保険に請求します。最もひどい手口は、その院に柔整師やスタッフが就職する際に、本人と家族全員の健康保険証の提出を求められます。その健康保険証から、あたかも院に通った形に書類を作り、家族順番に架空の施術料の請求をします。これは、柔道整復師の方から聞いた話です。その方は、良心の呵責から辞めたそうです。
不正を行う先生方の認識は、「皆、やっているよ」「バレなきゃ大丈夫」のようなノリで、総じて罪の意識が希薄に感じました。ただし、これはれっきとした保険金詐欺です。しかも、健保や労災相手だと、公金に対するもので、警察がすぐに動きます。したがって、バレないように少しづつ、できれば患者とグルで、それなりの工夫をしているようです。
どの業界にも悪党はおります。それは弁護士、行政書士も同じです。ただし、医療従事者の不正は、得てして各方面に、何より患者さんに害が波及します。例えば昨年の実例ですが、弊所と弁護士によって、とっくに解決した交通事故の被害者さんに警察から連絡が入りました。事故当時に通っていた接骨院で、「実際に施術をしたのか?」、「その日付は?」などの聴取を受けたそうです。まるで「グルか?」の疑いです。その被害者さんにとって、まったく身に覚えのない嫌疑がかかったのです。これは、不正が見つかった院について余罪がないか、過去に遡って警察が調べているからです。もうこれだけで、大変な迷惑です。 当時の記事 👉 接骨院・整骨院の不正請求 また、交通事故の被害者さんが、通院中の院にそのような不正が発覚、ないし疑いが生じた場合、直ちに保険会社の治療費支払いが止まります。後の後遺障害申請においても、そのような治療経緯はマイナスでしかありません。治療状況や症状の一貫性等を重んじる、14級9号の認定などは致命的かもしれません。 今年に入って、早くも疑い濃厚な院に出くわしました。繰り返しますが、施術料の不正請求は、刑法上の罪はもちろん、実害が非常に大きいと思います。そのような院に対し、その不正を告発することは簡単ですが、それは私達の業務ではありませんし、何と言ってもキリがありません。柔整師の先生の道徳心に頼るのは限界がある位、とにかく不正が多過ぎて、現場では嘆くばかりなのです。柔道整復師の業界をあげて、徹底的に不正撲滅に動くべきと思います。このままでは、業界全体の信用失墜です。不正を行うような院で、施術を受けたい患者さんなどいないと思います。 かつて、スタッフだった柔整師からも色々と業界の醜聞を聞いたものです。