今年も色々なニュースがありましたが、交通事故絡みに関しては、時々意見展開しています。今回は、交通事故と直接関係ない事ではありますが、愚見をお許しください。   (1)韓国の女性DJさんへの痴漢行為

 このニュースに関しては、テレビやネットで侃々諤々、様々な意見が飛び交いました。それらの意見の多くは、以下ABに二分しているようです。    A: 痴漢行為を受けて当然の恰好や、受ける可能性が高いシチュエーションに自ら飛び込んだ・・痴漢行為をされる側にも責任がある。    B:痴漢行為は100%加害者が悪い。加害者の為に、何故、(この場合)女性が服装や行動に制限を受けなければならないのか(怒)。     どちらの意見が正しいか? それは当然、Bに決まっています。犯罪行為の是非など問うまでもないと思います。ただし、Aの意見が根強いことも事実です。すると、B派は、女性に対する不当な抑制だのと激昂、Me Too運動、広くジェンダーの問題に発展させるのです。     ちょっと、待って、    この場合、議論を二つに分ける必要があります。   C:痴漢行為自体は、犯罪ですから絶対的に悪であり、加害者が100%悪いことで、ひと段落とします。次に、犯罪行為を惹起する服装や行動、管理体制については、相当に問題があったと思います。誰でも予想のつく事件で、起きても何ら不思議な事件ではないのです。残念ながら、世の中には悪い人や、避けようのない事故や天災が存在します。生きていく上でリスク管理が必要なのです。その点、被害者側の「うかつさ」は問われて当然です。つまり、この問題は、両極端な意見の勝敗や正誤ではなく、二つの問題として、別々に議論する必要があります。    少数ながら二つを分けて意見展開する=C派の方も散見しました。C派の人で、交通事故を例に、上手い説明をした方の意見をみました。それを引用します。「交差点で青信号になったので、渡りました。すると、信号無視の自動車に跳ねられました。これは、自動車が100%悪いです(0:100)。ただし、ケガをして大変な目に遭います。だから、青信号でも左右を観て渡りましょうね、と安全指導されるのです」。自動車運転過失傷害罪と交通安全指導、別々の問題ですね。まさに、本件の痴漢問題にも当てはまります。

 世の出来事は複雑です。物事を二つの対立軸にすることは、「おろか」とまでは言い過ぎですが、まったく未熟な発想で、その発想が極端であることが問題なのです。何事も善悪、白黒では計れない事があります。善悪は立場で逆転しますし、どっちとも取れないグレーもあれば、問題をいくつかに分けて考えるケースもあるのです。本件は、まさに、痴漢行為と予防対策、別々の議論にすべきなのです。    (2)マスク拒否男性の無罪主張

 この事件、高裁でも威力業務妨害などの判決となりましたが、最高裁へ上告するようです(周囲の弁護士さんによると、最高裁では却下されるとの予想です)。これは、意見が二分することなく、被告であるマスク拒否の男性への判決が正当との意見が大多数、議論の余地はないようです。それでも、小数意見を蔑ろにせず、審理することは民主主義の根幹です。

 ただし、裁判の争点ですでに問題がズレています。この裁判はマスクの規制の正当性は関係ありません。切符は、乗客の規定順守を条件で購入していますから、乗客は航空会社・乗務員の指示に従う事になっています。マスクの着脱どころか、フライトに適さない服装なども規制の対象で、極論すれば、フライトの安全確保の為には、ある意味、人権すら制限されているのです。本件の場合は、乗務員の指示に従わないこと、乗務員の腕をつかむこと(暴行と判断された)、騒ぎを起こすこと、結果としてフライトが遅れること、これが問題なのです。飛行前の機内は、マスク着脱の論争をする場ではないのです。この点、議論が平行線となっています。

 被告は暴行や職務の妨害を否定していますが、10月30日の高裁判決は「乗務員は被告に対応するため、機内監視などの保安業務や他の職務ができない状態だった」と、判決の理由としています。つまり、マスクの是非など、審理の外、どうでもよいのです。フライトの安全の期する規制と、コロナ対策としてのマスク義務は、別の議論なのです。完全に別問題と言ってもよいでしょう。

 もっとも、普通であれば、不承不承マスクをして乗り、後に(マスク規制は人権侵害だと)問題提起する。あるいは、降りる。このように対処すべきでしょう。どうして、たかがマスクの着脱で、こうも頑張るのかなぁ、その人にとっては、その場で絶対に譲れない、その場で絶対に解決しなければならない、大事な問題なのでしょうが・・。    マスク警察・・もはや思い出になってしまった感があります。確かに、同調圧力や過剰な正義を振りかざすことに対する警鐘は必要だと思います。コロナ対策の総括として、議論すべきことは残ったと思います。ただし、これは飛行機の搭乗中のいさかいとは、まったく別の問題です。この方は、その場で、分けて考えることはできなかったのでしょうか。    もっとも、議論すべき意見の相違ではなく、必要な検証でもなく、単なる思い違いを起こす人、巷に少なからず存在します。裁判まで発展する前に、知恵で回避できないものか・・と思ってしまいます。     

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【事案】

自転車で横断歩道を走行中、自動車に衝突される。頭部を強打したため救急搬送され、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、側頭骨骨折の診断が下された。   【問題点】

受傷から1年以上経過していることから保険会社から打切りを迫られて、ご相談にいらした。主治医は高次脳機能障害に理解がなく、高次脳機能の検査すらまともにしていなかったため、すぐに検査できる病院と検査結果を評価できる医師を探す必要があった。   【立証ポイント】

直ちに病院同行の日程を調整し、主治医と面談することができた。大きな病院のため、恐らく高次脳機能障害の検査をすることは可能だったが、この医師では正しい評価・診断書作成は厳しいと判断し、以前、別件でお世話になった病院への紹介状を依頼した。

ひとまず検査と評価に問題はなくなったため、夫に事故前・事故後の変化を詳細に聞き取り、医師に提出した。診察では分からないような日常生活についてのエピソードを盛り込み、検査結果だけでは書ききれない項目についても、実情に踏み込んだ記載をしていただくことができた。本件は意識障害が軽度であったため、9級認定を想定していたが、日常生活の観察が評価されて7級4号が認定された。

一見すると、事故前と同様に回復しているが、ご家族や近しい人にしか分からない苦労が多々あるのが高次脳機能障害である。今回、無策のまま元の主治医に後遺障害診断書を依頼していたならば、12級13号若しくは14級9号で終わっていたかもしれない。

(令和4年8月)

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(1)病態

 前回㊳で果部骨折を解説しましたが、コットン骨折は、内果と外果の両果骨折に、脛骨の後部、後果骨折を合併したものを三果骨折、コットン骨折といいます。

 コットン骨折の多くは、距骨が前方もしくは後方に脱臼するので、足関節の脱臼骨折を伴います。交通事故では、軽貨物車を運転中、2トンとラックとの衝突で、自車がスピンし、電柱に激突した、バイクを運転中に、軽トラックの追突を受け、堤防から転落した、そして、意外に多かったのは、トラックからの荷物の積みおらし作業で、荷物を足下に落とした例です。   (2)症状

 激烈な痛み、腫れ、骨折部の内反もしくは外反変形、皮下出血などで立ち上がることができません。   (3)診断と治療

 診断は、足関節の腫れ、圧痛、変形、皮下出血をチェック、骨折は、XPで確定します。後果の骨折は、正面からのXPでは発見されないこともり、CT、特に3DCTやMRI撮影が有用です。

 従来は、麻酔科で徒手整復後、ギプスをタイトに巻いて8~10週間の固定が実施されていましたが、現在は、スクリュー(海綿骨ねじ)で内・外果骨折部と脛腓間を固定、後果部もスクリューで内固定し、術後は6~8週のギプス固定、4週よりはPTB歩行ギプスになります。

 整復不能例では、スクリュー、鋼線による引き寄せ締結法、プレート固定が行われています。三果骨折、コットン骨折後の足関節の可動域の予後は不良です。後果部の骨折が3分の1以上のものは、この治療を行っても、予後は不良とされています。レアケースですが、難治性疼痛症候群やCRPSを惹起しやすい部位でもあります。   (4)後遺障害のポイント

Ⅰ.

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足関節果部骨折(そくかんせつかぶこっせつ)

    (1)病態

 足関節果部骨折とは、足首のくるぶしの骨折のことです。足関節は、足関節の上にある脛骨と腓骨の遠位端部をソケットに見立てれば、これに、はまり込んでいる距骨、脛骨、腓骨と靭帯でつながっている踵骨の4つの骨で構成されています。交通事故では、バイク対自動車の衝突で、バイクの運転者が跳ね飛ばされたときなど、足関節に強い外力が働くと、足関節周囲の靱帯損傷や脱臼、骨折が生じます。下腿の骨折で最も頻度の高い骨折です。

 果部とは、俗に梅干しと呼ばれる出っぱりの部分で、自分で触れて、確認することができます。果部骨折は、内側の脛骨の出っぱりを骨折した内果骨折、外側の腓骨の出っぱりを骨折した外顆骨折、内果と外果の両方を骨折した両果骨折の3つがあります。さらに、脛骨の内果と後果が折れた上に、腓骨の外果を骨折した三果骨折があります。

 両果と三果の場合、関節のソケットは破壊され、多くは足関節の脱臼を伴います。さらに、少なからず周辺の靭帯も損傷します。後遺症なく回復することは極めて少ないと言えます。両果、外果、内果は、(4)後遺障害にそれぞれの認定例を挿入しています。また、三果骨折は(コットン骨折)は次回に集中解説します。    続きを読む »

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