久々の高次脳機能障害ですが、実は認定は1年以上前です。現在、自賠責保険の認定後、訴訟に係累している高次脳案件が他に2件、立証作業中が4件・・まだ、ご紹介できませんが、続々と決着待ちです。    本件は、主治医が「高次脳機能障害」と思っていませんでした。脳神経外科の医師とはいえ、事故前の患者を診たことがありません。ケガをしてから診るのですから、事故前後の微妙な変化がわからないのです。その症状が軽度であれば尚更、普通に見逃される障害なのです。

 大ピンチであったのですが、幸い佐藤が自ら開拓した近隣の(高次脳の検査・評価ができる)病院にお連れして、事なきを得ました。ホームページでいくら高次脳機能障害の専門家をアピールしても、病院を確保していなければ、絵にかいた餅です。弊所では、各県に専門外来・専門医を確保しています。これが、事務所の力と思っています。   各県に高次脳機能障害の評価が可能な病院をおさえていますから  

7級4号:高次脳機能障害(60代女性・東京都)

【事案】

自転車で横断歩道を走行中、自動車に衝突される。頭部を強打したため救急搬送され、外傷性くも膜下出血、脳挫傷、側頭骨骨折の診断が下された。   【問題点】

受傷から1年以上経過していることから保険会社から打切りを迫られて、ご相談にいらした。主治医は高次脳機能障害に理解がなく、高次脳機能の検査すらまともにしていなかったため、すぐに検査できる病院と検査結果を評価できる医師を探す必要があった。   【立証ポイント】

直ちに病院同行の日程を調整し、主治医と面談することができた。大きな病院のため、恐らく高次脳機能障害の検査をすることは可能だったが、この医師では正しい評価・診断書作成は厳しいと判断し、以前、別件でお世話になった病院への紹介状を依頼した。

ひとまず検査と評価に問題はなくなったため、夫に事故前・事故後の変化を詳細に聞き取り、医師に提出した。診察では分からないような日常生活についてのエピソードを盛り込み、検査結果だけでは書ききれない項目についても、実情に踏み込んだ記載をしていただくことができた。本件は意識障害が軽度であったため、9級認定を想定していたが、日常生活の観察が評価されて7級4号が認定された。

一見すると、事故前と同様に回復しているが、ご家族や近しい人にしか分からない苦労が多々あるのが高次脳機能障害である。今回、無策のまま元の主治医に後遺障害診断書を依頼していたならば12級13号、若しくは14級9号で終わっていたかもしれない。  

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(4)後遺障害のポイント

 交通事故外傷では、癒合で完治と断定することはできません。成長の著しい幼児~10代は、爆発的に骨組織が伸長するので、容易に癒合します。しかし、その後、骨折しなかった方の足と比べ、転位や骨成長の左右差、軟骨の不具合による関節裂隙の左右差などが残存することがあります。これが、骨短縮、可動域制限、疼痛などにつながれば後遺障害の対象となります。    解説 👉 骨端線損傷と成長線骨折   Ⅰ.

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腓骨遠位端損傷・骨端線損傷(ひこつえんいたんそんしょう・こったんせんそんしょう)  

  (1)病態

 成長期の子ども、(女子では15歳、男子では17歳頃まで)に特有な骨折です。足関節の脛骨および腓骨の遠位端には成長軟骨層があり、骨端核を中心に成長していきます。骨端線損傷は、骨の骨端線部分およびその周囲に起こる骨折のことです。

 ここでは、腓骨の遠位端・骨端線損傷を中心に解説します。

 成長期では、どんどん骨組織が発達します。下腿骨の脛骨と腓骨が、どんどん伸びていくのです。この時期に、足の捻挫などにより骨端線、成長軟骨部分を損傷することがあります。足関節を構成する脛骨および腓骨の遠位端には成長軟骨層があり、骨端核を中心として、成長と共に成人の骨へと変化していくのですが、骨端部分が成人に近い状態にまで完成されても、脛骨と腓骨の成長が終了するまでは、骨幹と骨端の間に骨端線が残っています。

 骨端線部分は完成された骨よりも当然に、強度が弱く、外力による影響を受けやすい部分であることから、強い外力の働いた捻挫や衝撃で骨端線損傷を起こしやすいのです。損傷の程度が軽いものでは、XP検査でも分かりにくく、捻挫と診断されるようなものから、骨端線からきれいにスライスしたように骨折している重傷例まで、いくつかの種類に分かれます。   ◆ 骨端線損傷のパターン

① 脛骨の骨端線を横断するように骨端線が離開したもの続きを読む »

 昨年までは、行政書士向けのセミナーはやったことがありませんでした。講師はもうすぐ100回に届きますが、同業からはお声がかからなかった・・いえ、正直に言えば2回ほどありましたが、あまりの多忙から、また、趣旨にそぐわないなど、生意気にもお断りしていました。    しばらく行政書士会からの依頼はなかったのですが、昨年10月、九州の仲間から声がかかり、web形式で実施しました。参加数が心配だったのか、九州全県への配信としたそうです。今時、交通事故業務をやっている行政書士など、絶滅危惧種と思いますが・・。

 それが、昨年10月16日でした。予想に反して、アクセスは100に届き、ここ最近のweb研修でも高評価とのお褒めの言葉を頂きました。福岡県会の皆様から、「来年も是非よろしく」とも。まぁ、社交辞令でしょう。「今度、飲みに行きましょう」と一緒です。    しかし、またもや意に反して、今年の8月に「いつが都合よいですか?」との電話が入りました。本当に再登板、軽く驚いたものです。その実施日が本日でした。      2時間半ほどの内容、その中間に恒例の演習問題をいれました。テーマは自賠責保険の死亡限度額の推移です。交通事故で亡くなった、タイガーマスク、キューティーハニー、上杉 和也(タッチ)、ミンキーモモ、槇村 香(シティーハンター)、それぞれの死亡年の限度額を解答して頂きました(答えは下表)。

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 法律行為にまつわる代理行為は、別の法律の定めがない限り、弁護士の専権業務になります。例えば、労災請求の代理を弁護士は当然行えますが、社会保険労務士の法律から、社労士も代理が可能です。    残念ながら、行政書士は行政機関に対する許認可申請以外、ほぼ代理ができません。私達にとっては、自賠責保険請求を目的とする医療調査で、ほとんどの医証が集積できていますから、労災の障害給付は、それらを転用するだけの作業です。実際、多くの件でお手伝いしています。労基と直接のやり取りや、提出代理はできませんが、それ以前の診断書・画像集めでは、ほとんど無償か、交通事故以外や自賠責保険がないケースでは、医療調査の一環として、手間賃を頂いています。ただし、ケースによっては、完全に請求者と労働基準局の間に入った方が、お互い話が早いことがあります。

 高次脳機能障害など、特殊な件では、労災請求手続き、追加資料の提出、労災資料の開示請求、あるいは審査請求など・・、これらを障害を持った被害者が担う事はほとんど無理と思います。代わりに担うご家族がいても、その労苦はいかばかりか・・。労基の担当者にとっても、手続きの説明や書類の提出要請に苦慮が続きますから、間に専門家が入ることは大歓迎なのです。

 もちろん、法律の壁がありますので、代理請求は弁護士か社労士に任せざるを得ません。ところが、社労士先生も面倒がり、弁護士も報酬の見込みが少なく、皆一様にやりたがらない作業こそ、労災請求なのです。秋葉なら、ついでの作業ですし、専門的な知識と経験から、最も適任者であると自負しています。

 それでも、コンプライアンスの観点から、家族や弁護士を代理人として、その指示で動くことになります。回りくどく、面倒ですが、仕方のないことです。たまに、労基の担当者とも、「専門的な人が間に入ってくれると楽ですが・・行政書士ではダメなんですよね」、そんな話をしています。    

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浅腓骨神経麻痺(せんひこつしんけいまひ)

 軽い内返し捻挫をイメージしてイラストを作成しています。   (1)病態

 膝窩部で坐骨神経から枝分かれした総腓骨神経は、腓骨々頭の後ろから前側に回り込むように走行し、膝下部、深腓骨神経と浅腓骨神経に分岐して腓骨に寄り添って足趾まで下降しています。

 下腿を走行、下降してきた浅腓骨神経は、足関節の手前で、中間足背神経と、内側足背神経に分岐し、足趾に到達、足の甲から足指の上側の感覚を支配しています。

 上のイラストですが、上の青○印の部分で、浅腓骨神経が圧迫されることが多いのです。下の青○印は、足首を内返しに捻挫したときに、距骨の角が隆起して浅腓骨神経を下から押し上げ、伸びてしまうことがあります。   (2)症状

 いずれも、足の甲の先部分にしびれと痛みを発症します。   (3)治療

 浅腓骨神経麻痺は、足の甲部周辺の感覚を支配する神経であり、この神経に麻痺が生じても、足関節や足趾の自動運動が不能になること、筋萎縮することもありません。

 青○印の2つのポイントを圧迫しないようにすれば、程なく改善するもので、交通事故であっても、後遺障害の対象ではありません。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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深腓骨神経麻痺=前足根管症候群(しんひこつしんけいまひ)

    (1)病態

 イラストのピンク色の線が深腓骨神経で、赤色で表示された部分の感覚を支配しています。青色の部分は、下伸筋支帯といい、筋膜が変性してできた腱で、ちょうど足首を回り込むようにして存在し、トンネルのような形状で足の背部を通る4つの筋肉を足根骨に押しつける役割を果たしているのですが、深腓骨神経はこの下を通り抜けて出てくるのです。

 サンダルのストラップによる圧迫、ジョギングシューズの紐の締め付けなどの繰り返しで、前足根管症候群を発症すると考えられています。足の下伸筋支帯の圧迫により生じる深腓骨神経麻痺は、前足根管症候群と診断されています。

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(4)後遺障害のポイント   ◆ 腓骨神経麻痺の経験は、交通事故110番宮尾氏が医療調査員時代、1999年5月から1年間、治療先に複数回の同行にて学習を続けました。まず、そのレポートから、確定診断までの観察。   ① 好発部位が、膝の外側周辺と、足関節の周辺であること、

② 骨折がなくても、強い打撲で発症する可能性のあること、

② 腓骨神経断裂では、自力で足首や足趾を曲げることができなくなること、

③ 足関節は、drop foot、下垂足の状態となること、

 これらを経験則としてマスターしたことから、傷病名に腓骨神経麻痺がなくても、受傷機転から、腓骨神経麻痺を疑うことができるようになり、結果、この19年で80例を超える経験則を積み上げたのです。   続きを読む »

 腓骨神経麻痺(ひこつしんけいまひ)

印は、腓骨神経断裂の好発部位です。   (1)病態

 長時間の正座で、足が痺れて立つことも歩くこともできなくなることがありますが、これは、一過性の腓骨神経麻痺です。腓骨神経は、坐骨神経から腓骨神経と脛骨神経に分岐しています。腓骨神経は、膝の外側を通り、腓骨の側面を下降して、足関節を通り、足指に達します。

 腓骨神経は、最も外傷を受けやすい神経で、膝窩部周辺や足関節の外傷で断裂することがあり、大腿骨顆部や脛骨顆部、足関節果部の粉砕骨折では、要注意です。   (2)症状

 腓骨神経麻痺では、足関節の背屈や足関節は自動運動が不能で、下垂足(かすいそく)となり、あひる歩行(※)=鶏歩、また、外反運動が不能になり内反尖足(ないはんせんそく※)を示し、足背の痛みを訴えます。腓骨神経の完全断裂では、足趾の自動運動も不能となります。

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 脛骨神経麻痺(けいこつしんけいまひ)

  (1)病態

 脛骨神経は、大腿後面の中央より遠位で坐骨神経の内側部分として分岐し、中央を下行、足関節の底屈と足趾の屈曲を行う筋群と、足関節外果より足背外側、足底の知覚を支配しています。

 脛骨神経は深部を走行しており、外傷の際に損傷を受けることはほとんどありません。稀に、膝窩部で損傷を受けることもありますが、腓骨神経麻痺に比較すれば少数例です。脛骨神経麻痺の代表は、神経の完全断裂ではなく、絞扼性神経障害の足根管症候群です。   (2)症状

 足根管症候群では、つま先立ちができない、足趾の屈曲が困難、足底の夜間痛、痺れなどの症状が出現します。大半は、保存療法もしくはオペで改善が得られるものであり、であれば、過剰反応することもありません。脛骨神経が完全麻痺すると、腓腹筋、ヒラメ筋の麻痺により足関節の底屈、内反、足趾の屈曲が困難となり外反鉤足を示します。   ※ 外反鉤足(がいはんこうそく)  踵足は、足のつま先が宙に浮き、踵だけで接地する足の変形です。中足骨の骨間筋は、神経麻痺のため、足趾に鉤爪変形が生じ、また、足底の感覚障害も起きます。   (3)診断と治療

 治療としては、足根管症候群であれば、保存的に、ステロイド剤の局注、鎮痛消炎剤の内服、足底板の装用、安静で改善を見ることもありますが、効果が得られなければ、屈筋支帯を切離し、神経剥離術を実施します。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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 坐骨神経麻痺(ざこつしんけいまひ)

    (1)病態

 坐骨神経は背骨から出発、お尻を貫いて太ももの後面を下がり、ふくらはぎを通って足に分布します。

 坐骨神経は、末梢神経では、最も太くて、長さが1mの神経です。大腿後側の中央まで下降して、そこで、総腓骨神経と脛骨神経とに分岐しています。つまり、膝の裏までは、坐骨神経であり、そこから脛骨神経と腓骨神経の2手に分岐し、この2つの神経が足の運動と感覚を支配しているのです。   (2)症状

 坐骨神経麻痺では、ふくらはぎの裏側や足の裏の痺れや感覚鈍麻、うずき、灼熱感、疼痛を発症し、膝や足の脱力感を訴え、歩行困難となります。

 完全断裂では、足関節の自動運動不能、下垂足を示し、膝の屈曲が自動でできなくなります。   (3)診断と治療

 坐骨神経麻痺は、坐骨神経が圧迫されたことによる絞扼性神経障害もしくは座骨神経痛であることが大半であり、この因子を除去してやれば、改善が果たせます。

 MRI、針筋電図、神経伝達速度検査で診断されていますが、腰部脊柱管狭窄症、腰部椎間板ヘルニアに合併しているときは、ラセーグテストやアキレス腱反射の神経学的検査でも確認できます。

 治療は、保存療法が中心で、鎮痛消炎剤や筋弛緩剤の内服で、炎症を抑制しつつ、物理療法として超音波治療などが行われています。保存療法で改善が得られないときは、圧迫している梨状筋切離術などの手術が行われています。   (4)後遺障害のポイント   Ⅰ.

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【事案】

トラックに同乗し、信号待ちで停止中、後続の自動車に追突されて負傷。その後、腰部痛に加え、右下肢の痺れ等の強烈な神経症状に悩まされる。   【問題点】

ご依頼の連絡があったときには、既に事故から2年以上経過しており、事前認定で非該当という結果であった。受傷から2ヶ月後に緊急手術(後方摘出術)を受けているにもかかわらず、非該当という結果が出たということは、何か他に理由があるのかもしれない。実際、調査中にボロボロでてきた。   【立証ポイント】

資料の収集先として、手術を受けた総合病院とリハビリ通院していた個人整形外科があり、後遺障害診断書は手術を受けた総合病院で作成されていたことが分かった。そのため、治療経緯に沿って、数珠つなぎで資料を取り付け、申請する方針とした。

まずは、関係が良好だという個人整形外科を受診し、初診から終診時までの推移が分かる資料を依頼した。患者に寄り添いつつも誇張のない資料が完成したため、その資料を持って総合病院を受診した。執刀医は既に転院しており、経過を診ていた担当医に事情を説明、個人整形外科で作成された資料を軸に、それらに沿った記載内容に担当医も快諾して下さり、先の個人院ではできなかった神経学検査等も実施していただいた。

また、日常生活での困窮点をご本人から詳細に聞き取り、分かりやすい文章に仕上げた。自賠責窓口でのゴタゴタはあったものの、審査が始まれば約1ヶ月で前認定が覆り、見事14級9号が認定された。

異議申立手続きを進めていくうちに、受傷機転が軽微であったことや救急搬送されておらず、物件事故扱いになっていたこと、後日に症状が重くなった事、相手方保険会社の担当者から良く思われていないことなど、ネガティブな要素は枚挙にいとまがない。穴の開いたポイで大物出目金を狙うかのような申請だった。

 厳しい作業に反して、認定の報告を聞いたときにはガッツポーズが飛び出た。依頼者がこの結果を非常に喜んでくださったので、諦めなくてよかったと心から思う案件であった。   (令和5年10月)   

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   治療経緯が迷走した件は、およそ14級を取りこぼします。まず、症状の一貫性や信憑性が疑われます。また、受傷機転に比べて症状が重い場合は、元々の症状=既往症、あるいは単に「大げさ」と判断されます。だからこそ、治療経緯に疑いをもたれないよう、正しく進めねばなりません。

 本件は、その治療経緯を取り繕う作業でした。2年も経ってからではなく、できれば、最初から相談に来てほしいものです。

おきて破り、相手損保と示談解決後の認定となりました。     

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 複合靭帯損傷(ふくごうじんたいそんしょう)   (1)病態

 膝関節の安定性は、靭帯で制御されています。まず、それぞれの靭帯の役割を整理します。    膝関節には、4つの主要靭帯、   ① ACL前十字靭帯、② PCL後十字靭帯、③ MCL内側側副靭帯、④ LCL外側側副靭帯、があり、   ⑤ PLS膝関節後外側支持機構と共に、膝の安定性を保持、正しい運動軌跡を誘導しています。   続きを読む »

 PLS 膝関節後外側支持機構損傷(ひざかんせつこうがいそくしじきこう)

(1)病態

 PLSは、LCL外側側副靱帯、膝窩筋腱と膝窩腓骨靱帯で構成されています。PLSは、主に膝の外側の安定性、外旋安定性に寄与している重要な靱帯と腱の複合体です。

 PLS損傷は、膝の靱帯損傷では少ない症例ですが、交通事故に代表される高エネルギー外傷では、複合靱帯損傷の形態で発症しています。

 単独損傷は少なく、特に、後十字靱帯損傷、膝関節の脱臼を合併したときは、膝窩動脈損傷、腓骨神経断裂などの血管・神経損傷が危惧され、重症例となります。   (2)症状

 急性期のPLS損傷は、膝外側部に圧痛を認め、広範な腫れと皮下血腫を認めます。PCL損傷、半月板損傷を合併しているときは、関節内血腫を伴います。

 PLS損傷では、内反動揺性と回旋動揺性のいずれか、あるいは両方が見られます。これらの動揺性を確認することにより、どの靱帯を損傷しているかが分かります。   (3)診断と治療

 何よりMRI検査ですが、損傷を正確に読み取ることは、膝関節の専門医でなければ無理です。内半・回旋動揺性がみられたら、早期に専門外来へ行くべきです。    内反ストレステストは、被害者を仰臥位で、完全伸展位と30°の屈曲位で行います。30°屈曲位のみで関節裂隙が開大するときは、LCL単独損傷が疑われます。完全伸展位でも、関節裂隙の開大が認められるときは、PLSの広範な損傷やPCL損傷の合併を疑うことになります。

〇 ...

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LCL 外側々副靭帯損傷(がいそくそくふくじんたいそんしょう)

(1)病態

 LCL外側々副靭帯は、ACL、PCL、MCL靱帯に比較すると、損傷する頻度は少ないのですが、交通事故に代表される高エネルギー外傷においては、PCL後十字靱帯損傷や腓骨神経麻痺を合併することもあり、重篤な後遺障害を残すことがあります。

 交通事故では、膝の内側からの打撃、膝を内側に捻ったときに断裂することがあります。単独損傷はほとんど発生していません。多くは、後方の関節包、PLS膝関節後外側支持機構という領域を含む複合損傷を来します。   (2)症状

 LCL外側々副靭帯損傷では、靭帯が断裂または引き伸ばされることによる膝外側部の疼痛、外側半月板周囲の膝の激痛と運動制限を生じます。

 膝の左右の不安定感もハッキリしており、膝が外れる、膝が抜けるなどの感覚を伴います。Grade III(靱帯の完全断裂)では、腓骨神経麻痺による下腿から足先の麻痺、膝窩筋腱領域に広がる膝外側から膝裏にかけての広範な疼痛と不安定性が見られます。   (3)診断と治療

 LCL外側々副靭帯は、膝が内側に向かないように制御している靭帯です。LCL外側々副靭帯損傷は、徒手検査で外側不安定性を認めることで、診断可能です(外反・内半テスト)。

 さらに、ストレスXP撮影で、動揺性、靭帯の緩みを確認してグレードを判別することができます。MRIでは、骨挫傷、軟骨損傷、その他の靭帯や半月板損傷など、合併損傷がないかを検証します。とくに、後十字靭帯損傷を合併していることが多く、Grade II以上の不安定性を認めるときは、MRI検査で、それらを検証しなければなりません。

 膝外側側副靭帯損傷の治療は、原則的にはリハビリを中心とした保存療法が中心ですが、Grade IIIで重度な不安定性が見られるときは、靱帯再建術が必要となり、膝関節の専門医の出番です。   続きを読む »

MCL 内側々副靱帯損傷(ないそくそくふくじんたいそんしょう)

(1)病態

 少々乱暴ですが、靭帯とは、膝を締め付けているベルトであると理解して下さい。膝の左右の内・外側々副靭帯と、前後の十字靭帯というベルトで膝を強固に固定しているのです。

 このベルトが伸びきったり、部分断裂したり、全部が断裂すると、当然に、膝はガクビキ状態、膝崩れを発症、これを医学では、動揺関節と呼んでいるのです。

 MCLは浅層、深層、後斜靱帯の3層構造となっており、長さ10cm、幅3cmの範囲で膝関節内側部の大腿骨内上顆から脛骨内側部にかけて走行しています。MCL損傷は、靭帯損傷の中でも最も多発する症例で、交通事故では、膝の外側から大きな衝撃が加えられたときに生じます。

 側副靭帯は、内側と外側にあるのですが、交通事故でも、スキー・サッカー・相撲でも、圧倒的に内側々副靭帯の損傷です。限界を超えて膝が外側に押し出されると、また外側に向けて捻ると、このMCLが断裂するのです。   (2)症状

 膝関節内は出血し、ポンポンに腫れ、強烈に痛く、ある被害者は、受傷直後は、アクセルを踏むことすらできなかったと話していました。

 逆に、腫れや歩けない程の激痛がなく、自転車をこいで家に帰った、そのまま運転して会社に行ったなど、事故での損傷を自ら否定することになります。後で画像で損傷が見つかった!としても、陳旧性の損傷が濃厚です。陳旧性とは古傷、あるいは経年性の靭帯の変性です。   (3)診断と治療

 診断では、膝の内側靭帯が断裂しているので、膝をまっすぐに伸ばした状態で、脛骨を外側に反らす外反動揺性テストを行うと、膝がぐにゃと横に曲がります。普通、膝関節は横に曲がりません。

 損傷のレベルを知るために、単純XP、CTスキャン、関節造影、MRIなどの検査が実施されます。靭帯損傷の検査、一昔前はエコーでしたが、近年、3.0テスラに高精度化したMRIが有効です。   続きを読む »

PCL 後十字靱帯損傷(こうじゅうじじんたいそんしょう)

(1)病態

 ACL前十字靱帯とPCL後十字靱帯は、共に、膝関節の中にある靭帯で、大腿骨と脛骨をつなぎ、膝関節における前後の動揺性を防止している重要な靱帯です。交通事故では膝をダッシュボードで打ちつけて発症することが多く、ダッシュボードインジュリィ(dashboard injury)と呼んでいますが、PCLだけの単独損傷は、ほとんどありません。

 多くは、膝蓋骨骨折、脛骨顆部骨折、MCL損傷を合併するので、実に厄介な外傷となるのです。運転席や助手席で膝を曲げた状態のまま、ダッシュボードに外力・衝撃などによって、膝を打ちつけ、𦙾骨が90°曲がったまま後方に押しやられ、PCL後十字靱帯損傷となるのです。同時に、膝蓋骨骨折、脛骨顆部骨折などに合併して生じることが多いのです。

  (2)症状

 後十字靭帯損傷は、前十字靭帯損傷と比べ、機能障害の自覚や痛みが少ないのが特徴です。前十字靭帯損傷に比して、痛みや機能障害の自覚が小さいものの、痛みや腫れは出現します。訴えは、膝蓋骨骨折などの痛みが中心となります。   (3)診断と治療

 後十字靭帯損傷とは、靭帯が部分断裂したレベルであり、単独損傷では、大腿四頭筋訓練を中心とした保存療法の適用となります。

 自覚症状としては、受傷初期は痛みがありますが、そう長びかないようです。問題は、靭帯が断裂、あるいは部分断裂で伸びてしまうと、膝がぐらつきます。まず、ぐらつきの特性を診断する必要があります。症状をしっかり医師に伝え、その異常に早く気付いてもらわなければなりません。    ◆ この治療を得意としているのは、膝の専門外来、スポーツ外来で、専門医が配置されています。ACL損傷に同じく、PCL損傷も徒手テストと画像から診断をおこないます。町の整形外科医では、湿布だけ出して帰らされることがあります。往々にして、診断が遅れることがありますので注意です。   ① MRI

 まずは、損傷の程度を確認、診断名につなげます。骨折を伴う場合は、当然に単純X線写真とCTは実施しているはずです。靭帯を精査するには、加えてMRI(場合によっては関節造影)検査を行います。

 ただし、骨折を伴う場合、骨折部に金属(プレート・スクリュー)で固定すると、すぐには検査できません。ハレーション(金属が反射して筋状の線が写る)が起きて、患部が観えなくなってしまうからです。骨折の癒合が優先されますから、毎度、抜釘するまでMRIはお預けとなります。    ② 後方引き出しテスト(posterior sag)

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(4)後遺障害のポイント   Ⅰ. 経験則では、医師にオペの自信がなく、保存療法に終始した被害者さんが少なくありません。つまり、膝関節に動揺性が認められ、日常や仕事上に大きな支障が認められる状況です。

 通常歩行に、常時、装具の必要性のある場合は、1関節の用廃で8級7号が認定されます。現在、靭帯再建術の向上から、8級はほとんどみなくなりました。多くは手術の改善により、10級か12級に下がります。     Ⅱ.

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