【事案】

原付バイクでT字路を直進中、狭路から右折してきた自動車と衝突し、負傷した。直後から大腿部の痛み、神経症状に悩まされる。

  【問題点】

救急搬送先では見当違いの部位をレントゲン撮影し、骨折が見逃されてしまった。翌々日に別病院を受診し、即入院・手術が実施された。一安心と思ったら、「症状固定は手術から1年経たなければ判定しない」と言う、頑なな医師であった。また、被害者自身が人に弱みを見せず、医師に「痛みや困窮」を言わない気質であった。   【立証ポイント】

初診時に骨折の傷病名がなかったが、保険会社が一括対応をしているため、その点は問題とならずに済んだ。また、定期的にご家族へ連絡し、痛みを訴えない本人の実状を聞き取り、その内容を細かく描写した。

後遺障害診断書の作成に後ろ向きであった主治医が事故から1年が経過する段階で転勤となったため、後任の医師に自覚症状を説明し、可動域計測、手術痕の計測等、細かく検査していただいた。後遺障害診断書上、股関節の可動域数値は3/4制限となったが、骨折の癒合状態が良好だったため、1ヶ月も経たずに14級9号で認定された。

高齢者が骨折すると、事故前に比べ生活は一変し、ご家族への負担が増大する。その点を踏まえると14級9号認定は軽いように思うが、認定基準に照らし合わせると、仕方がない…と納得せざるを得ない。予想通りの結果ではあるが、モヤモヤが残る案件である。   (令和5年7月)  

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 大腿骨転子部・転子下骨折(だいたいこつてんしぶ・てんしかこっせつ)     (1)病態

 従来、関節包の内側骨折を大腿骨頚部内側骨折、関節包の外側骨折を大腿骨頚部外側骨折と2つに分類していたのですが、最近では、欧米の分類にならって、関節包の内側骨折を大腿骨頚部骨折とし、関節包の外側骨折を大腿骨転子部骨折、大腿骨転子下骨折と3つに分類しています。

 大腿骨転子部骨折は、足の付け根部分の骨折であり、交通事故では、自転車・原付VS自動車の衝突で、自転車・原付の運転者に多発しています。高齢者の転倒では、橈骨遠位端部、上腕骨近位端部と大腿骨頚部・転子部の骨折が代表的です。   (2)症状

 転子部・転子下骨折では、事故直後から足の付け根部分に激しい痛みがあり、立つことも、歩くこともできません。骨折折の転位が大きいときは、膝や足趾が外側を向き、外観からも、変形を確認できます。   (3)治療

 単純XP撮影で、大腿骨転子部に骨折が見られ、確定診断となります。安定型、不安定型のどちらであっても、早期離床を目的として、ほとんどで、手術が選択されています。早期の手術、早い段階からリハビリテーションで、起立、歩行ができるように治療が進められています。大腿骨転子部骨折は、頚部骨折に比べて血液供給のいい部位であり、骨癒合は比較的順調です。

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