大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)   (1)病態

 大腿骨の上部は、大腿骨頭、大腿骨頚部、転子部と呼ばれる3つの部位で構成されています。

 大腿骨は頚部で内側に屈曲し、大腿骨頭と骨盤骨である寛骨臼蓋で股関節を形成しています。ヒトは、屈曲した大腿骨で身体を支えているのですが、屈曲した部分は、転倒や転落の際に、外力が集中することになり、骨折しやすい形状となっています。

 この骨折は、骨粗鬆症で骨が脆くなった高齢者に多発することでも有名です。交通事故では、自転車や原付VS自動車の衝突で、自転車や原付の運転者に多発しており、とくに、高齢者では、骨折をきっかけとして寝たきりや、外に出かけようとしない、引きこもりになってしまうことが、社会問題となっています。

 医学的には、股関節の中で骨折する大腿骨頚部骨折と、股関節より膝方向に離れた関節外の部分で骨折する大腿骨転子部骨折、転子下骨折の3つに分類されています。3つの分類の中では、大腿骨頚部骨折が、圧倒的多数です。   (2)症状

 事故直後から、痛み、腫れ、関節の可動域制限を訴え、歩行できないことが一般的ですが、安定型の骨折では、転子部・転子下骨折に比較すると、痛みも軽く、受傷直後は歩けることもあります。頚部骨折は股関節内骨折であり、骨折による腫れが、肘や膝のようには、目立たないのです。   (3)治療

 単純XP撮影で、大腿骨頚部の骨折を見ることができます。頚部骨折では、受傷直後に、XPで骨折が見えないことがあります。こんなときは、MRIで、骨折を探らなくてはなりません。

 Grade Ⅰ 不完全な骨折、    Grade Ⅱ 完全骨折で、転位のないもの、   続きを読む »