股関節唇損傷(こかんせつしんそんしょう)
(1)病態
関節唇は、肩と股関節にだけに存在するもので、環状の線維軟骨組織で形成されており、関節の安定性を高める、滑り止めの役割を果たしています。股関節唇は、股関節内の大腿骨頭が、外に外れるのを防ぐ土手のような役割をしているのです。
交通事故では、歩行者、自転車、バイクなど、転倒時に、股関節が大きく広げられることにより、関節唇に亀裂が発生しています。 (2)症状
股関節唇損傷が、そのまま放置されると、亀裂が大きくなるばかりでなく、裂けた軟骨が関節の中に入り込んでスムーズな動きを妨げるようになり、さらには、入り込んだ軟骨が股関節表面を傷つけ、症状は深刻化していき、やがては、修復術が必要となります。
聞き慣れない傷病名ですが、ダウンタウンの松本人志さん、巨人軍の杉内俊哉投手、俳優の坂口憲二さん、アメリカではレディーガガさんが、この傷病名で悩みました。松本さん、杉内さん、レディーガガさんは、部分切除術もしくは縫合術を受けているはずです。
股関節唇損傷では、脚を動かす動作で疼痛が走り、引っかかるような症状を訴えます。あぐらをかく、股関節を外側に開く運動=外旋、内側へ倒すような運動=内旋するときに疼痛が生じ、日常的には、靴下を履く、爪を切るなどの股関節を深く曲げるような動作で疼痛が発生します。 (3)治療
症状が軽いときは、関節を深く曲げるような無理な動作を避け、鎮痛消炎剤の内服で炎症を抑え、症状が和らぐのを待ちます。
重症では、関節鏡手術などの対象となります。股関節の外側に小さい穴を、数カ所開け、内視鏡によって、損傷部を切除、あるいは縫合する股関節鏡による手術です。
つづく ⇒ 後遺障害のポイント