① 真性の腱板損傷:後遺障害10級レベルの立証
本件では可能性が極めて低いのですが、もし、事故受傷による棘上筋断裂であれば、肩の専門医の診断を乞います。肩関節の1/2制限など、本来、手術が適用される重度損傷です。
秋葉事務所が指定した専門医のもと、すでにMRI撮影済みでも再度3.0テスラMRI検査、あるいはエコー検査を重ね、専門医の診断(書)と検査所見を完備します。
それまで通院した小池クリニックの診断や、精度の低いMRIは、あくまで治療経過を辿るものとして補強的な医証へ下げます。そして、間違いのない10級、あるいは12級レベルの医証を固めてから弁護士につなぎます。
具体的には、専門医の診断書とMRI・エコー画像に、治療経過としての診断書・MRIを揃え、説得力のある受傷機転の説明を加え、可動域制限を裏付けるリハビリ記録、手術を検討するカルテの記述など、あらゆる証拠を収集します。これは、ある意味、審査側をも助ける作業になるはずです。
② 陳旧性の腱板損傷:現実的戦略と回復努力
被害者さんの受傷機転と直後の治療経緯から 、恐らく陳旧性の病変と予測できた場合。被害者さんのスポーツ歴、職歴を尋ね、確信を得たら、元々事故前から肩に変性があったと説明、枝野さんの理解を促します。
ここでもし本当に肩関節の可動域に2分の1制限があったとしても、10級を主張すれば詐病者扱いになる場合があるのです。
肩関節:外転80°の計測記録でも・・・最悪、「非該当」の結果が返ってきます。自賠責の怒りを買った結果です。可動域の数値通りに肩関節の障害とみてくれません。
そんな、無謀な申請は敬遠させます。先日の説明通り、自賠責の視点を知っているからです。受傷後の肩関節の痛みから、あまり動かさずにいた為に関節拘縮が進んだ場合であれば、専門医へお連れして、理学療法を工夫して継続、可動域の回復へ向かわせます。お金を取ることだけが秋葉事務所の仕事ではありません。
このように、被害者さんに現実的な等級認定・解決への理解と、回復への努力を促します。そして、次の③に進ませます。
③ 事故直後から肩の痛みが発症した場合・・後遺障害14級9号だけでも確保
陳旧性損傷や年齢変性であっても、事故以前は何ともなく、事故後から痛みを発症するケースもあります。これはムチウチに同じく、引き金論(元々あった損傷が事故を契機に痛みを発症)として、医学的に説明がつきます。事故の衝撃でインピンジメント症候群を発症したケースも数件、経験しています。簡単に言うと、歳をとって棘上筋等のささくれが肩関節を動きを邪魔し、場合によっては関節部に石灰化が起き、中高年のいわゆる四十肩・五十肩の症状となります。これは経年性の内在的な病変ですが、運悪く、事故を契機に痛みを発することがあります。これを、自賠責は「外傷性の肩関節周囲炎が惹起された」とギリ推測、14級だけは認定してくれました。この件は、歩行中に車にはねられて肩を強打したケースでした。自動車搭乗中にコツンと追突されてでは・・一笑に付されます。この手の多くは、「頚肩腕症候群」と言って、頚部神経症状由来の肩の痛みが多くを占めます。可動域制限については、痛みから余計動かさなくなることで、関節拘縮が進行するケースが多いようです。
したがって、外傷性肩関節周囲炎にしろ、頚肩腕症にしろ、真面目にリハビリを継続し、適当な時期に症状固定、先生に診断書の記載をお願いします。ここで、過度な可動域制限の数値などは敬遠させます。できるだけ、肩の可動域は自助努力で回復させるべきです。すると、症状・治療の一貫性から、神経症状の14級9号認定の余地を残します。ややグレーながら、症状の一貫性と信憑性があれば、自賠責も鬼ではありません。