【事案】
自転車で交差点右折の際、左方よりの自動車と衝突、転倒したもの。右肩の激痛から、レントゲン検査したところ、肩甲骨の肩峰が骨折、数日後、転院先で手術(鋼線での固定)となった。
【問題点】
肩関節、挙上の回復が進まなかった。就職を控えている事情から、リハビリ通院を続けることなく、抜釘後に症状固定とした。計測値は10級レベルであった。一応、肩関節に隣接する骨折であること、肩関節が下方転位していることを理由に、この数値で申請をかけた。肩峰骨折後の肩関節・機能障害、新たな挑戦である。 初回申請の結果、機能障害ではなく、変形での認定となった。自賠責の判断は、「肩峰骨折は肩関節の可動に影響しない」とのこと。肩鎖関節脱臼後の鎖骨上方転位による変形の評価に留まった。本件は、肩鎖関節脱臼後の鎖骨の上方転位(ピアノキーサイン)の例外で、むしろ、右肩関節が下方に落ちている。 【立証ポイント】
直ちに異議申立を行ったが、回答はオウム返し。次いで、自賠責・共済紛争処理機構に申立ても、より丁寧な説明になったが認めてくれなかった。3度の申請から、”肩峰は肩関節に影響しない”との立場、”癒合上も問題ない”との評価が鮮明になった。裁判での立証を残すも、若さからか可動域の改善も進んでいたため、自賠責の判断を受け入れることとした。
依頼者さまには長期間の浪費となり、迷惑をかけてしまった。久々の完全敗北だが、これも実績に刻んでおきたい。
(令和2年5月)