相手との賠償交渉はやるけど、人身傷害への請求をやってくれない、
弁護士の交通事故業務とは、損害賠償請求の代理人契約に則り、交通事故被害者さんの損害を経済的に回復する業務です。しかし、公的・民間問わず、保険金請求代理行為を含むのか?、交通事故被害者の全面的な救済を負うのか?、昨日はこれらが約束されたものではないことに警鐘しました。契約内容が賠償交渉のみ、もしくは賠償交渉以外は相談に留まる場合があります。
被害者さんは契約上、弁護士先生が「どこまでやってくれるのか」をしっかりチェックすべきです。ここ数年は、自賠責保険の請求業務を積極的にやって下さる事務所が増えました。かつての「等級が取れてからまた来て下さい」と言う事務所は激減したようです。しかし、人身傷害を含むその他保険請求までは、未だに消極的な先生が多いようです。昨日の記事で説明したように、実は人身傷害保険への請求こそが、交通事故解決の最大のポイントになることがしばしばです。だからこそ、相手との賠償交渉だけの契約書には注意が要るのです。弁護士先生は契約書に従ってその範囲内で業務を履行します。これは当然に違法でもなんでもありません。「冷たいねぇ」とは思いますが。
かつて、クレサラ業務、いわゆる過払い金返還請求業務が最盛期の頃、とんでもない額を弁護士・司法書士事務所が稼いでいました。すでに判例でグレーゾーン金利が否定されていますから、なんら立証要らず、エクセルの計算書をFAXするだけで大金がザクザク入る、実に利益性の高い業務でした。しかし、各地の弁護士先生から苦言を良く聞いたものです。 「大手法人の弁護士事務所は、過払い金の返還だけやって終わり、残った債務整理に関する事務をやってくれない。その残った面倒な手続きに立ち往生した債務者さんが、再び(私の)弁護士事務所へ依頼にしょっちゅう来るんだよね・・」 この苦言を伴うクレサラ業務は、パラリーガル(ざっくり法律事務所の事務員と思ってよいです)がエクセルで計算するだけ、後はFAXと2~3の郵便と電話で事足ります。債務整理全般を受け持つ契約ではないことから、依頼者はここで契約終了です。恐らく多重債務者の多くは、続く細かい手続きに難渋すると思います。弁護士や事務員を100人雇い、年間億単位の莫大な宣伝費を使っている事務所はどうしても効率を求めます。利益性高い部分のみ行い、費用対効果の悪い事務は受け持たない・・これが最重要命題です。本来なら面倒をみてあげたい債務者の全面救済より、経営効率が優先されるでしょう。
これは、弁護士事務所とて営利企業であるところ、資本主義社会では当然のことで責めることではありません。仕方ないのです。だからこそ、依頼者さんの事務所を選ぶ賢明な判断が必要なのです。
この通り、交通事故業務でも同じことが起こっています。だから既視感なのです。依頼者さんは安易に宣伝を鵜呑みにせず、しっかり、契約内容を吟味してから契約すべきです。より良い品質が必ずしも評価されないことは、どんな業界でも常です。それでもできれば、依頼者さんが宣伝よりも品質で選ひ続けた結果、どの事務所もこぞって作業内容を競うようになることが理想です。
いつの時代もどの業界でも、理想と現実のせめぎ合いです。「現実」に負けそうですが、できれば理想を求めたいものです。