【事案】

自転車で走行中、併走する自動車と接触、転倒した。頭部を強打、意識不明状態で救急搬送されて、脳挫傷、くも膜下出血の診断となる。

  <参考画像:右前頭葉への脳挫傷>

【問題点】

本人との面談時、外見上はとても元気そうで、職場や相手方保険会社の担当者からも症状は軽く見られていた。ケガをした本人も自分はもう大丈夫だと元気さをアピールしていた。しかし、家族の話を聞いてみると、本人が自覚しきれていない症状が多くあり、とても仕事復帰できる状況ではなかった。

【立証ポイント】

実施した神経心理学検査を病院同行で確認し、自覚症状(家族から確認していた症状)と表れていた検査数値と比較し、家族が重くとらえすぎている症状や、逆に軽く感じすぎている症状を浮き彫りにする作業が続いた。

とくに、神経心理学検査で判別が難しい、性格変化がクローズアップされた。事故前よりも性格が明るくなりすぎた事や、幼児退行、事故前から持っていた趣味への関心がまったくなくなったこと等が明らかになった。家族は性格が明るくなった面(周囲からは歓迎されうる性格変化?)について違和感を覚え、戸惑っている様子だった。そこで、弁護士事務所での面談や病院同行でのエピソードを採用、これらをもとに、日常生活状況報告書をまとめて被害者請求をした。

その結果、主治医の予想を上回る5級2号が認定された。なお、本件では味覚・嗅覚障害もあり、それぞれ14級相当が認定され、併合5級となった。

※ 併合の為、分離しています

(平成30年3月)  

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 前日の解説から、給与額・勤務日、その対比がはっきりしていれば、(b)方式=「休日を差し引いた勤務日数で月給を割って、日額を算定する」ことが正しい算定となります。それでは、アルバイト・パート・日雇い労働者の場合を続けます。

  (2)日雇い労働者やアルバイトについても、労働契約上、実際に労働した時間に応じた金額の給与が支給されることになっているはずですので、適切な証拠があれば、事故前に実際に労働した単位時間(実労働日1日)当たりの基礎収入を算定することが可能です。

 そして、労働契約上、各週・月のどの日に勤務するかが概ね決まっている者(アルバイトにはそのような者が相当数いると思われます。)については、事故に遭わなかった場合、どの日に労働していたかを認定することがきるため、(b)の計算方法で休業損害を算定することができます。このような場合に、被害者側が(b)の計算方法で算定した休業損害を請求しているにもかかわらず、(c)の計算方法を採用することは、休業損害を過少に認定することになるので、適切とはいえません。    他方、日雇労働者は、通常、短期の契約を予定していて、事故の発生の時点で、将来どの日に労働するかが決まってないことが多いと思われます。

 また、アルバイトにも、労働契約上、各週・月のどの日のどの時間に勤務するかが決まっていない者もいます。このような給与所得者についいては、事故に遭わなかった場合、どの日に労働をしていたかを認定することが困難であり、(b)の計算方法で休業損害を算定することはできません。

 しかし、通院などによって、事故に遭わなかった場合と比較して、その分の労働の機会を失い、現実の減収が生じたとみることができますので、休日を含んだ一定期間の給与の平均日額を基礎収入とし、これに通院日等を乗じる方法((c)の計算方法)で休業損害を算定することになると考えられます 。  

 アルバイトについては、時給が定められており、勤務日(シフト)もある程度固定していれば、以前から保険会社も(b)方式で算定してくれました。日雇いも同じく、計算が易しいものです。しかし、今回の解説を読むと、証拠が必要であると読み取れます。保険会社に(b)方式で請求をすれば、勤務予定表や過去の勤務表なども必要になるかもしれません。

 保険会社は常に”払い過ぎ”に臆病な生き物です。細かい立証を待たず、(c)方式での支払が無難なのでしょう。そもそも、休業損害の支払いは、被害者の差し迫った損害に対し、急いで対応するものです。したがって、案件の性質に合わせて柔軟に算定方式を使い分けることはもちろん、まずは(c)方式での支払いを受けて、最終的な賠償交渉で、立証書類を基に(b)方式に算定し直し、不足分の追加請求も有かと思います。

 総括しますと、判で押したように「事故前の3ヶ月を90日で割って、日額を算定する」方式は、もはや、スタンダードではない。ただし、「休日を差し引いた実勤務日数から、日額を算定する」方式は、それを裏付ける書類が必要であること。また、実勤務日数と対応する給与が明らかではない場合や、急場しのぎでは、「事故前の3ヶ月を90日で割って、日額を算定する」方式もあり得る、と言う所でしょうか。    

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