これは、出社時間が問題とるケースです。 (Q)2時間早い出勤でも通勤災害となるでしょうか?
当社のOLの大原さんが、通勤途上の交差点を横断中に交通事故受傷しました。大原さんは会社の始業時刻の1時間30分から2時間も前に出社しています。 始業までの時間、資格試験の勉強をしており、仕事をしている訳ではありません。会社の担当者は「何故、そんなに早く出勤しているのか」と、しつこく聞いてきます。このような事情でも、通勤災害の適用ができるでしょうか?
(A)本件は通勤災害としての認定がされるでしょう。
小姑の嫁いびりのような質問です。 会社の総務、庶務、労務課にはこの手の担当者が多いので、いつも閉口しています。 通勤とは、「労働者が就業に関し、自宅と就業の場所との間を合理的な経路・通勤方法により往復することを説明する。」と説明されています。 本件では小姑じみた担当者が、”就業に関し”を問題としているのです。
通勤では、往復行為が業務と密接な関連をもって行われるとの要件を満たさなければなりません。 しかし、業務に直接関連のない目的の早出や、逆に時間後も会社に残っていることは、よく見られるケースです。ここで、”就業に関し”があてはまるか、「社会通念上、就業との関連性を失わせると認められるほどの長時間かどうか」を検討します。
S51-9-1基収第793号では、私用と考えられる組合の用務のために通常の出勤時間よりも1時間30分早く家を出た労働者が、途中被災したケースについて、「被災労働者が、労働組合の集会に参加する目的で、通常の出勤時刻より約1時間30分早く住居を出た行為は、社会通念上、就業との関連性を失わせると認められるほど所定の就業開始時刻とかけ離れた時刻に行われたものとは言えないので、当該行為は通勤と認められる。」との判断を示しています。
また、S49-11-15基収第1881号では終業後、2時間5分の組合用務で会社に残り、その後の通勤経路で被災したケースが通勤災害と認定されています。今度は退社時間について、 ”終業に関し”を検討しますが、出勤も退勤も同じ条件とされています。 したがって、2時間程度であれば、社会通念上、就業との関連性を失うことはありません。 よくある、満員電車を回避するための時差通勤や、会社で新聞・雑誌を読むために毎朝1時間早く出社、これらも、非常識ではありませんし、程度問題から大丈夫でしょう。
ただし、以下は、「社会通念上、就業との関連性を失わせる」ことになり、労災は否定されるでしょう。
・サッカーワールドカップ(早朝の衛星放送)を会社で観るために、朝5時に出社した。
・終業後、会社に居残り、ネットゲームを3時間。
・・・1時間程度の短時間なら・・まぁ。 あるいは、(ウソはいけませんが)「残業をしていた」と言えば通りそうです。